藤野涼子がいま輝いている3つの理由
1/10000の大抜擢!
オーディションの応募は約1万人。業界内でも前代未聞とささやかれるほどの難易度の高い選考やワークショップをくぐり抜け、見事大抜擢されました。
大の大人を圧倒する迫力
大人と対立しながらも殺人事件の裁判を取りまとめる中学生という難しい役どころ。射抜くような眼差しと低い声で大人のベテラン俳優たちと渡り合いました。
役名を芸名にする覚悟
『ソロモンの偽証』の主人公である「藤野涼子」を芸名にしてデビュー。普段、学校に通うときも心は藤野涼子でいようとするなど、1年5カ月もの間、作品に心血を注ぎました。
もっとヤンチャなことをしたほうがいいのかな
—— 15歳になられたそうですが、自分のことをまだ子どもだと思いますか?
藤野涼子(以下、藤野) あと5年でお酒を飲めるようになるし、車の運転はもっと早くできるようになるので、そう考えるとすぐだなと思うのですが、まだまだ子どもだと思っています。
—— 大人には早くなりたいですか?
藤野 なりたいですね! 大人の方は知識がたくさんあるので、おしゃべりをするのが楽しいんです。自分ももっといろんなことを知っていたら、大人の方と楽しくおしゃべりできるんだろうなって思うと、まだまだ子どもだなあって。
—— じゃあ、藤野さん思う大人のイメージというのは……。
藤野 知識をたくさん持っていて、頭の回転のいい人は大人だなあって思います。
—— 『ソロモンの偽証』の撮影で、そんなふうに感じた人はいましたか?
藤野 成島監督と(佐々木)蔵之介さんですね。私は撮影現場で藤野涼子を生きるのに精一杯で、いろんな方とお話することができなかったんです。なので父親役の蔵之介さんとも、撮影が終わってからイベントなどで、ようやく目を合わせて話せるようになりました。話してみると本当に頭のいい方だったので、こんな大人になりたいなって思ったんです。
—— 撮影中は親子の役でも目を見て話せなかった?
藤野 ちょっとできなかったですね(笑)。母親役の夏川(結衣)さんみたいな大人になりたいとも思いました。夏川さんはいつも笑顔で挨拶してくれたり、私がなるべくひとりにならないように話しかけてくれるんです。周りの人のことをいつも見て、気にかけてくれる方なので、私もそういう気配りができるような大人になりたいと思っています。
—— 逆に今の年齢だからこそできると思うことや、大切にしたいことはありますか?
藤野 もっとヤンチャをしたほうがいいのかなって思います。15歳なので、もう手遅れかもしれないですけど……。
—— いやいやいや(笑)。
藤野 4月から高校生なのですが、中学校生活ではもっとバカなことをすればよかったなと思いました。バカって言うとちょっと違うかもしれないけど。
—— 羽目を外す、とか?
藤野 そうですね。そういうことがしたかった。
希望の光を照らしてくれる人は必ず近くにいるはず
—— 映画のテーマにもなっている中学生の自殺やいじめについてお聞きしたいのですが、藤野さんが中学校生活で経験してきた人間関係などを振り返って、どうしたら中学生の自殺やいじめを少しでも減らすことができると思いますか?
藤野 映画でも描かれていることですが、家族との関係が大事だと思います。子どもと大人の中間である中学生にとって、大人といえばやっぱり両親が一番大きな存在ですよね。高校生になったら、たとえばアルバイトなんかもそうですけど、中学生のときよりは多少いろんなことができるようになるから、居場所も広がると思うんです。だけど中学生だとそうはいかないから、ひとりで悩んでしまう気がして。
だからこの映画は、中学生の子どもを持つお母さんとかにも観ていただきいですね。自分の家はどうなのか、そういうことを考える機会になったらいいなって思います。私はまだ中学校を卒業したばっかりなので、人間関係についてそんなに語れるほどの知識はないのですが、人間を信じるってことが一番大切な気がします。
—— 人間を信じる。
藤野 はい。もしいじめられていたとしても、希望の光を照らしてくれる人が近くに必ずいるはずなので、人に話したくない気持ちもあるかもしれないですけど、やっぱり人を信じて相談するのが一番いいんじゃないかなって思います。でも私が実際にいじめられて、それでも人を信じられるかって言われたら、どう思うかわからないけれども……。
—— 前回のインタビューでお話をうかがったとき(筆者は前篇公開時に続き、2回目のインタビュー)、『ソロモンの偽証』のお仕事をやる前は、親や先生にも悩みを打ち明けられなくて、自分に宛てて手紙を書いていたとおっしゃっていましたよね。そのときは、友だちや周りの大人を信頼できなかったのでしょうか?
藤野 ああたしかに……そうだったのかもしれません。だけど周りの人を信じられなくなると、自分のことも信じられなくなりそうな気がするんです。
あのときの私は、少なくとも自分のことだけは信じていたかったので、それで手紙を書いたのだと思います。今読み返すと、こんなことで悩んでいたんだって思うんですけど。ひとりで悩んでいたり、苦しんでいるような子に希望の光を見せるために、『ソロモンの偽証』を作ったと監督はおっしゃっていました。だからこの映画を観て、自殺志願者がひとりでも減ってくれたらいいなと思います。
—— 4月からはどんな高校生活を送りたいですか?
藤野 部活に入りたいと思っています。勉強も頑張りつつ、高校生活をエンジョイしたいです。
—— 女優としてはどんなふうにやっていきたいですか?
藤野 今は学業に専念したいので、そんなにいっぱいお仕事はやらないかなと思っています。
—— でも女優の仕事は続けていきたい?
藤野 はい。
—— では長い目で見て、女優としての目標はありますか?
藤野 まずは一定の速度と高さで、焦らずに続けていきたいです。
—— 『ソロモンの偽証』で共演した子たちが次々と飛び立っていくのを見ても、焦る気持ちはありませんか?
藤野 私も飛び立つんですけど、低空飛行でスーッと行きます(笑)。
—— なるほど(笑)。「初心忘るべからず」という言葉がありますが、今回初めて本格的な演技を経験して、この先、女優を続けていく上で忘れたくない気持ちはありますか?
藤野 演技を始めたいと思った最初の純粋な気持ちと、自分がこの場所に立っていられる感謝の気持ちを心のなかで持ち続けていきたいです。『ソロモンの偽証』の一次オーディションのときに難しいお題が出て、思わず泣いてしまったんです。だけどいつもとは違う、いろんな感情のこもった熱い涙で、そのとき本当に女優の人生を歩んでいきたいと思いました。それを忘れないために、藤野涼子という役の名前をいただいたので、10年、20年経っても、この熱い涙のことを忘れないでいきたいと思っています。
おまけ「くるくる藤野涼子」
(おわり)
藤野涼子(ふじの・りょうこ)
2000年生まれ、神奈川県出身。約1万人が参加した『ソロモンの偽証』のオーディションで、主役に抜てきされる。初心を忘れたくないという気持ちから、役名で女優デビューを果たす。特技はヒップホップダンス、テニス。
構成:兵藤育子 写真:加藤麻希
©2015 「ソロモンの偽証」製作委員会
『ソロモンの偽証 後篇・裁判』
2015年4月11日(土)公開