エロ雑誌のお仕事とは
田房永子(以下、田房) 私はいまも連載させてもらっているエロ本は「裏ネタJACK」という雑誌だけなんですが、「あの女子アナは、学生時代、肉○○女だった?!」とか「白昼堂々 開催される屋外乱交パーティーに潜入!」とか、そういう感じの本です。
樋口毅宏(以下、樋口) 「肉◯◯」! 酷い言葉ですが、エロ業界では重要なビジネスワードです。ブルセラ雑誌の強制終了後に、『ニャン2倶楽部』というマニア系エロ本が僕を拾ってくれて、数年後には編集長までやらせてもらいました。
田房 『ニャン2倶楽部』は、とても有名な雑誌ですよね。
樋口 御存知ない方のために説明すると、読者投稿のエロ本です。自分の彼女や奥さんとのプレイを撮影したものの、性器が写っているため写真屋では現像してくれないので、編集部宛てにフィルムを送ってくるんですね。それをこちらは二部プリントして、一部は返却し、一部は誌面に載せる。そういう素人写真で構成されたエロ本でした。さらに過激なカップルは、自分の奥さんや彼女を「編集部の皆さんで可愛がってやって下さい」と連れてくる。もちろん目線は入っています。
僕の『日本のセックス』という小説は、マニアエロ本に投稿するカップルが主人公です。
日本のセックス (双葉文庫)
あらすじ:容子は、夫・佐藤の誘いで他の男とセックスをする。はじめはためらいがちだった容子も、夫以外とのセックスにのめりこむ。止まることを知らない佐藤夫妻の欲望は暴走し、ついに二人はある事件に巻き込まれていく。
田房 「裏ネタJACK」もキレイなグラビアというより、“素人写真”的な感じですね。そこが一番最初に潜入ルポ漫画の仕事をくれて、11年連載してるんですが、最近はエロとあまり関係のない子育ての話とか書いたりしてます。
樋口 そこで鍛えられたんですね。
田房 DVDが付録でついてるエロ本では、女の子のパペット人形が、エロがらみのいろんな場所に行くというおまけコーナーがあって、そのパペットの操作と声優を担当してました。ものすごくギャラが安かったけど、いろんな現場に行ったりAV女優さんに会ったりできて、なんかすごく思い入れがあって、未だにその雑誌は捨てられないです。エロ本の仕事自体、思い出すと「私の青春」って感じがします。
樋口 そのDVD見てえ……。今度くださいね。
『日本のセックス』のマニアカップルは、理想の夫婦関係!?
田房 私も今日、この対談に備えて『日本のセックス』を読ませていただきましたが、とてもおもしろかったです。
樋口 ありがとうございます。僕の著作の中では『日本のセックス』がいちばん女性からの評判がいいんです。あの、ホント自分で言うのも恐縮なのですが、「男性がよくあれだけ女性の心理を書けたね」と、女性読者から言ってもらえます。
田房 私も思いました。「分かってるジャン……」って。主人公の佐藤は、かなりどぎついマニアの男性ですが……、あれは樋口さんご自身がモデルなんですか?
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