※本連載の参加者の方の発言は、あくまで個人の見解にもとづくものとなります。
【メンバー紹介(仮名)】
32歳/腐女子歴20年/某メーカー勤務
キャラクター商品制作のディレクターをつとめ、少年マンガ作品から女性向けまで幅広く担当。イケメンだが様子のおかしい攻めに惹かれる。『刀剣乱舞』では三日月宗近推し。
26歳/腐女子歴15年/BLマンガ編集者
雑誌、アンソロジーや、BL以外のマンガも担当。チョロい受けを調子にのらせて屋根に上った瞬間に無邪気に梯子を外すようなBLが好き。『刀剣乱舞』では燭台切光忠推し。
25歳/腐女子歴16年/出版社の営業・マーケティング
アニメプロダクションでつとめてからの転職。喪服の似合う受けが好き。『刀剣乱舞』では一期一振推し。
29歳/腐女子歴16年/音声関係の制作・マネジメント
ドラマCD制作、webラジオからアニメの音楽プロデュースまで幅広く経験。前職ではキャラ商品の制作を数十作担当。優男攻めばかり好きになる。『刀剣乱舞』では加州清光推し。
企画会議に同人誌を持って行きました
岡田育(以下、岡田) この世界、新卒採用の時点では、オタクや腐女子だからといって内定に有利ということはないようですね。でも、ひとたび業界に入ってしまえば、ご自身が腐女子やオタクであることは大きな武器になるんじゃないですか?
ミカ うーん……。
岡田 ヒカリさんのようにBLマンガの編集というド直球の仕事をしていなくても、昨今のコンテンツビジネスは、女性の消費者、とくに腐女子のお財布を無視して企画を立てるわけにはいかないでしょうし、「腐女子ゴコロがわかる」作り手は重宝されるのでは?
イチゴ ……結局、自分の「萌え」は役立たないんですよね。
一同 うんうん。
ミカ 「萌え」という感情を知っていること自体は仕事に役立つんですけど、「好み」は邪魔になるから極力殺してます。自分が消費者として好きなものが、市場でウケるわけじゃないんですよ。そういう意味ではプライベートで作品を楽しんでるときにも、自分の「好み」や「萌え」よりも「この売れそうなコンテンツ羨ましい!」って気持ちが先に出るようになってる(笑)。
キヨミ 業界に入って、自分が好きな作品の名前をあげたら、「あ〜それ売れなかったやつね」とか言われるの、つらくないですか?
ヒカリ あるある! 「それ、最近一番だめだったやつ」とか……。会社に入ってはじめて、自分の好みがニッチすぎて全然ウケる路線じゃないということに気づきました。同業の友人から、「担当作家さんの名前でエゴサしたらお前のアカウントの感想ツイートしか出てこなかった」って言われたことすらある。だからBLマンガの編集だからといって、「自分の萌え」の基準そのままで編集することはできない……。
岡田 そうか……まぁ、オタク女子や腐女子といっても、みんながみんな同じものを同じように好きなわけじゃないですもんね。そこは、傍目にもよく誤解されがちなところですが。となると、もっと客観的な腐女子人気の捉え方といいますか、いわゆる一般的な「腐女子の消費行動」については、どうやって判断して、予測して、商品化に活かしていくんでしょうか。
キヨミ 私、企画会議に同人誌を持っていったことあります。
岡田 それは思い切った行動ですね! 同人誌でプレゼン!
プレゼンは資料作りで決まる! 意思決定を引き寄せる6つのステップ
キヨミ 今ではメジャーな作品と認識されてるんですけど、結構シュールな作風の作品で、当時は商品化したいと思って原作を紹介しても「どうしてこれが人気なのかわからない」って言われたんです。だから、こういうふうにカップリングして萌えるのに絶好なんですよ、って説明しました。理解は得られなくても人気があることはわかってもらえましたね。
岡田 なるほど……百聞は一見に如かず、ですね。「腐女子はこう楽しむ」というのを、おじさま方に説明してあげるんだ。たしかに、原作コミックスだけ渡して読ませても、まったく通じない作品もあるだろうな。
ミカ 私も気になる作品があったらまず二次創作からチェックして、プレゼンでも利用しますね。コミケのサークル数も見て。企画を通すためにコミケの参加サークル数一覧を出して「ほら、この作品はぶっちぎりでしょ?」ってプレゼンしたことがあります。
キヨミ pixivの検索件数とかも見ますよね。pixiv百科事典が丁寧に編集してあるとありがたい。「お、ここのCPが人気なら、この二人をうまく組み合わせて商品展開できる……」みたいな。
業界にひそむ「天然腐男子」
ミカ でもあんまり狙うと制作サイドからは「腐女子向けコンテンツではないので」って言われたりするんですよねえ……。
岡田 やっぱりそういう反応もあるんですね。
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