いい本は、考え方の骨格を提示してくれる
山本一郎(以下、山本) マジメにこの本がどういう本か考えたとき、入門として「考え方の骨格を提示してくれるのがいい本」というように、何がいい本なのかそのテクニックをいくつか提案するのは大切だと思う。我々の斜め読みもひとつのテクニックだけど、咀嚼できないと行動にまで展開できない。渋谷あたりをぷらぷらしてるニートに『臆病者のための株入門』を読ませても投資はしないじゃない。
漆原直行(以下、漆原) 行動まで促せれば最高だよね。
中川淳一郎(以下、中川) 俺は「超基礎の話を知る術として本を読めばいい」と思ってるんです。この前、『新潮45』で「『出版文化』こそ国の根幹である」という特集があって。「考えてみたら俺のもの書きとしての基礎知識って、すべて『学研まんが』由来だ」って話を書いたの。学研まんがって、世の中にあるものの基礎をサーッとなぞれる。忍者の暮らしとか(笑)。するとそこからいろんな知識欲求が出てくる。きちんと腹落ちするくらい咀嚼できる本って、知的欲求を湧きたたせるための装置としてすごく優秀なんですよ。
漆原 それはわかる。僕は本選び、とりわけ実用書選びを相談されたら、必ず「一番わかりやすくて薄めの本を選んでください」と伝えてます。実際「目の前の仕事に困ってる」という自覚がある人は素直にアドバイスを聞いてくれる。厄介なのは「俺、そこそこ仕事できるようになってきたぜ」と勘違いしてる、入社3〜4年目のこじらせ感満点の連中。あいつら難しい本読みたがるんだけど、実務にいかすなら圧倒的にシンプルでわかりやすく薄い本。それを一冊全部読み切るといいんだけど……。
山本 読み手の体力の問題ってあるじゃない。
漆原 そう! そうなんだよ。体力に見合わない本を読んでも、わかった気にはなるかもしれないけど、実は理解が進まない。
山本 ネットニュースがウケるのは、短い文章を歯切れよく読ませてくれて、わかった気になれるから。ところがその繰り返しに慣れると、長文を読む体力がなくなってくる。
漆原 紙面を開いた時の圧力もある。僕自身は「いかにもビジネス書」的な作り方をした、余白の多い本は大嫌いだけど、本を読むのに慣れてない人に読ませるなら、ああいうやり方も視野に入ってくるんだと思う。
読み手の体力が低下している
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