撮影:興村憲彦
忘れていくなら、覚えればいい
夢がまたひとつ、叶いました。二〇一五年四月からぼくは大学生になりました。駒澤大学仏教学部に社会人特別入試枠で合格したの。これから十代の同級生と机を並べて勉強すると思うと、何か不思議な感じがします。
大学を受験しようと決めたのは去年四月。三月で大きな舞台から引退したので、そこでぽっかりあいた時間に今度は何をしようかな、と考えたのがきっかけ。たいていみんな、年をとるたびにどんどん肩から荷物を降ろして、自分にご褒美をあげているでしょ。肩の荷を降ろすのも、ご褒美をあげるのも素敵なことだけど、ぼくはみんなと同じことはしたくない。だから肩の荷も降ろさず、ご褒美もあげないのがいいんじゃないかな、と思ったんです。舞台という荷をひとつ肩から降ろしたから、同じだけの重さの、何か別の新しいものを背負いたいな、という気持ちになった。
それでまず、年をとって自分が一番大変だと感じてるのは何かを考えました。今、ぼくが直面している難題は、いろんなことをどんどん忘れていくこと。だったらそれに挑戦しようと思いついた。忘れるっていうのは引き算だから、その分、何か新しいことを足し算していけばいいんじゃないの? だったら勉強するのが一番だよって。ただ、目標がないと突っ走れないし、途中で手を抜いてしまう。それで最終目標を“大学受験”にしたんです。ちゃんと新しいことを覚えたのか覚えられなかったのか、客観的に判断してもらえるのもいいな、と思って。ちゃんと覚えられたら最後に“よくできました!”ならぬ“よく覚えました!”っていう判子を押してもらえたら、それも嬉しいしね。
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