名人vs将棋ソフト。歴史に残る戦いを実現するなら、今がベストタイミング

人間とコンピュータ将棋ソフトが五番勝負で対局する将棋電王戦FINAL。先週土曜に開催された第3局ではコンピュータが勝ち、いよいよ第4局、第5局と「コンピュータ将棋界2強」と呼ばれるソフトが登場します。ソフトが人間と同等、あるいはそれ以上の強さを持つようになったいま、人間対コンピュータの戦いにおける“公平”なルールとはいったいどのようなものなのでしょうか。コンピュータはミスしても動揺しないから不公平? 時間制限は人間側に不利? コンピュータを何台もつなげて強くするのはずるい? など、さまざまな意見があるなか、『ドキュメント コンピュータ将棋』の著者である松本博文さんは、「人間もコンピュータも最大の力を発揮する戦いが見たい」と言います。コンピュータ将棋、そして人工知能、機械と人間の関係について考える対談、最終回です。

頭のなかを可視化すると、将棋は強くなる

加藤貞顕(以下、加藤) 将棋電王戦は今回で最後という発表が主催のドワンゴ側からありましたが、この先の展開はどうなるのでしょうか?

松本博文(以下、松本) 前将棋連盟会長の米長邦雄永世棋聖は、電王戦が始まった当初「電王戦はその後ずっと続くかもしれないし、それで終わりかもしれない。わからない。あなたの結婚生活と同じです」と言っていました(笑)。そのとおり、誰にもわからないんじゃないでしょうか。

加藤 結婚生活(笑)。さすが米長さん。つまり、まだ決まってないんですかね。

松本 今回の電王戦FINALの結果を踏まえつつ、決めていくことになるのではないかと思います。ただ、コンピュータはこれからもどんどん強くなっていくので、人間のトップが勝負をするのは今をおいてほかにないという声が、コンピュータ将棋の関係者側からは上がっています。

加藤 もう、チェスだと勝負をしようという話にすらならないですもんね。

松本 チェスの世界の人間対コンピュータの戦いは、コンピュータの勝ちということで決着がついた感じになっていますよね。1996年と1997年におこなわれた、当時のチェス世界チャンピオン ガルリ・カスパロフとチェス専用のスーパーコンピュータ ディープ・ブルーの六番勝負で、1997年にディープ・ブルーが勝ちました。その後も世界チャンピオンがソフトに挑戦しましたが、引き分けから次第に勝てなくなり、2009年にはスマートフォンに搭載されたチェスソフトが、グランドマスター※1級の評価を与えられています。
※1 チェス選手の最高位のタイトル

加藤 チェスはもう、スマートフォンのスペックでも、プロ級の強さなんですね。

松本 そう考えると、2007年におこなわれた渡辺明竜王v.s. Bonanza(将棋ソフト)戦は、絶妙なタイミングでおこなわれた対局なんです。

加藤 2007年の時点でやっておいて、よかったと。

松本 この対局を実現させたのは、故米長邦雄永世棋聖の功績ですよ。当時連盟の理事職についていて、このイベントの担当として準備や運営に関わっていた森下卓九段が言うには、米長さんに「渡辺さんが負けたらどうします?」と聞くと、「それは考えてない。見切り発車だ」という答えが返ってきたそうです(笑)。このとき渡辺竜王が負けたら、えらいことになってたと思いますよ。僕はこの対局を一中継スタッフとして見ていました。Bonanzaが予想よりも善戦するものだから「すごい!」と盛り上がってたんですけど、イベントの責任者として現場にいた森下さんは顔面蒼白でした。

加藤 森下さんって、本当に実直な、まじめな方なんですね。

松本 そのあと森下さんが体調不良で入院された原因の一つが、このときの心労だったと思います。だから、その森下さんが昨年の第3回電王戦に出場することになったときは、びっくりしました。

加藤 五番勝負の4局目でツツカナというソフトに負けてしまったわけですが、2014年の大晦日にリベンジマッチをおこないましたね。

松本 第3回電王戦が終局したときの記者会見で、森下さんが「継ぎ盤を使い、一手15分で指すルールであれば、まだプロの方が強いのではないかと思う」と発言したのが発端です。継ぎ盤とは、実際に検討している局面を並べてみるための盤と駒ですね。普通、プロ棋士は頭のなかで駒を動かしながら指します。子どものころからそういう訓練をしているからです。プロ棋士からは継ぎ盤を使ったって頭のなかで考えるのと大差ない、という意見がほとんどでした。

加藤 でも、そうではなかった。

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ドキュメント コンピュータ将棋』松本博文インタビュー

松本博文

3月14日に開幕した、プロ棋士とコンピュータ将棋ソフトが五番勝負で対局する将棋電王戦。第1局の斎藤慎太郎五段 対Apery(将棋ソフト)の対戦は、斎藤五段が勝利をおさめました。幸先の良いスタートに、今回はプロ棋士側が勝ち越せるのではな...もっと読む

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コメント

SLGjpn [あとで読む] 4年弱前 replyretweetfavorite

Atack20 羽生さんとコンピュータが対戦してほしいです。 4年弱前 replyretweetfavorite

prisonerofroad #将棋 #電王戦 4年弱前 replyretweetfavorite

Sinnichio 羽生ポナンザ戦は見たい! 4年弱前 replyretweetfavorite