まったく“無駄なこと”、はないのかも
[ ピンボール ]
『ピンボール』の「僕」は、“フリッパーのスペースシップ”というピンボールに夢中になります。大学にも行かずゲームセンターに通いつめ、アルバイト代の半分をつぎ込むも、ゲームセンターは閉店。いつかはやめなければいけないと頭で分かっていても、どこかでピンボ―ルの呼ぶ声がする、と言います。
そこで彼はスペースシップを探しまわるようになるわけですが、3年後、マニアの倉庫で見事再会。ここで、擬人化したピン ボール(多分、美女)と対話し、最後の別れを告げます。作中に登場するピンボール研究書、『ボーナス・ライト』の序文には「あなたがピンボール・ マシーンから得るものは殆ど何もない。(中略)逆に失うものは多く、歴代大統領の銅像が建てられるくらいの銅貨と、取り返すことのできぬ貴重な時間だ」と書かれてあります。
リプレイを繰り返すだ けのゲームは結局何も生み出 さないという身も蓋もないお話。ですが、物質的には何も残さなくとも、何かに夢中になった日々は記憶として残るはず。ちなみにこの本は、架空の本なんですけど、ね。
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