平川克美、村上春樹を語る

村上春樹は、なぜこんなにも多くの人々から愛されているのでしょうか? そんな素朴な疑問に対し、実業家・作家の平川克美さんは「村上春樹を読めば、“答えのない問題”に耐えられるようになる」と切り出します。

村上春樹を読めば、“答えのない問題”に耐えられるようになります。

村上春樹の主人公たちは、しばしば女性陣から「優柔不断」と非難されること があります。『ノルウェイの森』の緑が、好きだと告白したにもかかわらず煮え切らない態度を取る「僕」に、「あなたが取らないと私そのうちどっか行っちゃうわよ」と言うように!

しかし、実業家で作家の平川克美さんは、そこには村上春樹ならではの「倫理観」が反映されていると見ています。

「村上さんにとっては、〝煮え切れなさ〞には重要な意味があるのです。昨今は明快で、断固とした決断が求められている。ですが、そもそも問題の多くは両義的であり、簡単に結論が出せるようなものではありません。自分に正直であればあるほど、その両義性に引き裂かれます。本当はそのほうが自然なんです。問題があるとすれば、多くの人がこの両義性に踏みとどまって考えることに耐えることができなくなっていることではないでしょうか

そもそも、「文学とは解答を示すものではない」と平川さん。話は一気に現代社会の問題点へと広がります。

どんな問題であれ『手近な解答』なんてありません。でも、急速な 変化に不安を感じている人々は、世の中のあらゆる矛盾に対してわかりやすい処方箋を求めたがる。だから橋下徹のような〝決断する人〞がもてはやされるわけですが、本当は処方箋なんてどこにもないんです。むしろ、安易な処方箋を求める心理が、厄災を生んでしまうことさえある。近ごろは『絆』という言葉 がよく使われますが、人間や社会の根本まで潜って考えなければ、異なる人同士がつながるなんてことはできません。しかし、村上春樹は読者をその深いところまで連れていくのです

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村上春樹が大好き!

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「無駄に価値がある!」がコンセプトの、雑誌『ケトル』。その毎号の特集をcakesで配信していきます。第8弾のテーマは「村上春樹が大好き!」。村上春樹作品の主人公は優柔不断だって言われることがあるけれど、寄り道して、いろんなモノを受け入...もっと読む

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