良いことは、カタツムリのようにゆっくり動く
(マハトマ・ガンディー)
弱肉強食!?
「弱肉強食」という困った言葉がある。自然界について言われるのはまだしも、ぼくたち人間の社会のありようもまた弱肉強食だというイメージが広く行き渡っている。
そしてこの現代世界に起こる多くの出来事が、この一言で説明される。いや、「説明できる」と信じられているのだ。このこと自体が、現代世界の深刻な問題のひとつだとぼくは思っている。
きみは「弱肉強食」という言葉で何を連想するだろうか。辞書によれば、それは弱い者が強い者の餌食となること、弱い者の犠牲の上に強い者が栄えること、だ。それが人間の社会のことであれば、そんなのは嫌だ、ときみはきっと思うだろう。では、これを自然界に限った話だとすればどうだろう。
「弱肉強食」にあたる英語の表現はないのだが、近いものに「ジャングルの掟(Law of the Jungle)」という表現がある。密林という野生の世界では、大きいもの、速いもの、力もち、鋭い牙、角、爪、毒といった“武器”をもつものたちが、小さいもの、遅いもの、無力なものたちを餌食にしている。そんなイメージだ。「掟」というのは英語のLAW、つまり、そこでは強者が弱者を支配するのは一種の自然法則だと考えられているのである。
「弱肉強食」という言葉がチャールズ・ダーウィンの進化論から来ているものと、誤解している人が多い。進化論についてはきみも学校で習ったと思う。ダーウィンは「適者生存」という言葉を使ったが、これは「弱肉強食」や「ジャングルの掟」とは似て非なるものだ。大事な区別なので、少し詳しく見てみよう。
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