私には、どんな一週間よりも長い、七日間だった。
父を見舞う以外には何もできず、もどかしい日常を過ごすしかない。大学へ行くと友人が新聞か何かで見たのか、「ミニオン、お父さん大丈夫?」などと話しかけてきた。心配して言ってくれていることはわかる。わかるのだが、その言葉の虚しさに行き場のない憤りを感じた。エチュードの演習でも、いつもなら参加するところを教室の隅で膝を抱え、友人の演技を漫然と眺めるのが精いっぱいだった。何も食べる気が起こらず、それでも空腹に耐えかねて口にしたものは、すべて紙の味がした。
ICUの決まった時間に見舞いへ行っても、父はいつも静かに眠っていた。眠っている顔を見つめ続け、帰途につく。すべてが宙に浮いている。何も確かなことはない。これから私はどうしたらいいんだろう。
もし、は考えたくなかった。でも、もし何かあったら、私は大学を退めて働こう。そう考えると、職業選択の余地はなかった。私は父の一人娘であり、唐十郎に女優の扉を開けてもらった人間なのだ。女優として、売れなきゃいけない。私にできるのは、祈ることだけだった。
一週間。
白く、狭い部屋だ。消毒液のにおいのなか、機械類が整然と並んでいる。窓は閉め切られ、垂れ下がったカーテンは微動だにしない。重病人だけが収容されている、閉鎖的で無機質な空間。父は頭部に包帯を巻き、酸素吸入器のマスクを顔に乗せていた。眠っている父を見続けて、ICUを出ようとしたときだった。
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