ウォシャウスキー姉弟監督、『マトリックス』3部作以来のオリジナル・ストーリイ
ラナ&アンディ・ウォシャウスキー姉弟監督作品(昔の兄弟監督名義も含む)では、サスペンスの『バウンド』、SFの『マトリックス』、それとトム・ティクヴァと共同監督した、6つの時代を描いた叙事詩『クラウド・アトラス』がベスト・ワークだと思う(製作や脚本等の関連作も含めれば、『アニマトリックス』と『Vフォー・ベンデッタ』が入る)。
彼らの新作『ジュピター』は明確に好き嫌いが分かれ、ワーナーにとって『マトリックス』のように光り輝く魅力的なフランチャイズにはならないだろう(ちなみに本作では、ウォシャウスキー姉弟のクレジットは、ザ・ウォシャウスキーズになった)。傑作とはいえないが、2D版と3D版の2回観るハメになってしまったのだから、決して嫌いというわけではない。随所に大作としての映像の凄さが伝わってくるためか、3D版の方が圧倒的に愉しめる。
同監督にとって、『マトリックス』3部作以来久々のオリジナル・ストーリイで、宇宙を支配する大王朝だとか、地球における人類の起源にも迫った、なんともいえない壮大なスケール感と(映像としての)ゴージャスさを放つ宇宙神話を構築しているが、平たくいえばスペースオペラである。ザ・ウォシャウスキーズは、シンプルな物語の中に病的なまでにたくさんのキャラクターやSFギミックをぶち込み、密度の濃い映像を見せつけ、とても一度観ただけでは、キャラクター名やディティールの全てを理解し覚えられるとは思えない。観終わってプレス資料を読んで知ったが、テリー・ギリアム監督が特別出演していたとは驚きだった(笑)。
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