第18回】関西若手の代表格・稲葉陽七段

プロ棋士と互角以上の戦いを繰り広げるまでに進化した将棋ソフト。不可能を可能にしてきた開発者たちの発想と苦悩、そして迎え撃つプロ棋士の矜持と戦略。天才たちの素顔と、互いのプライドを賭けた戦いの軌跡。今日までのコンピュータ将棋に関する最前線を追った『ドキュメント コンピュータ将棋』が3月25日発売予定です。本連載では、本書から特に電王戦FINAL出場者たちの素顔や想いの部分を抜粋して紹介していきます。


イラスト:さんぺい(@k_sanpei)

 稲葉陽は1988年8月生まれで、兵庫県の西宮出身。将棋は6歳頃覚えた。現在はアマ強豪として活躍し、アマ竜王戦優勝などの実績がある兄の聡など、周囲には常に強い子供たちがいた。そうした環境の中で、自然にプロへの道を志した。

 2000年、井上慶太(現九段)門下として、関西奨励会に入会。同期には中村太地六段、門倉啓太四段(いずれも関東)らがいる。
 入会後ほどなくして、例会で、同じ年齢の少年と対局した。稲葉が優勢になると、その少年は泣き出した。その少年の名は、糸谷哲郎という。糸谷は2006年に17歳で、稲葉は2008年に19歳で四段昇段を果たしている。そして糸谷は2014年、森内俊之竜王から竜王位を奪取した。ライバルの糸谷が先にタイトルを取ったことに関して、稲葉ははっきり「悔しい」と口にする。

 糸谷が竜王を取って、現在は糸谷が大きくリードした形になったが、それまでの稲葉の活躍は、糸谷に優るとも劣らない。

 稲葉はプロデビュー直後、棋聖戦の本戦トーナメントで勝ち進み、四段ながら挑戦者決定戦にまで勝ち進んだ。最後で木村一基八段に敗れ、羽生善治棋聖への挑戦権は逃した。しかしこの活躍で、関西には稲葉という強い若手がいるということが大きく知れ渡った。
 2013年の銀河戦では決勝トーナメントで屋敷伸之、糸谷哲郎、行方尚史、橋本崇載を連破。全棋士参加棋戦で初の優勝を飾り、七段に昇段している。
 2014年度のB級2組順位戦では、最終戦を待たずに、2月の時点でB級1組に昇級決定。順位戦においてはライバルの豊島に追いつき、そして糸谷に一歩差をつけた。
 稲葉の師匠は、井上慶太九段。同門には船江恒平五段と菅井竜也五段がいる。稲葉から見て、船江は兄弟子、菅井は弟弟子にあたる。言うまでもなく、船江と菅井は電王戦に出場経験者である。
 井上門下三人目の男として、稲葉もまた、電王戦の舞台に立つことになった。


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 空城の計

 「電王戦FINALへの道」、一手1分以内という条件で、稲葉は本番バージョンのやねうら王と対戦した。先手の稲葉が横歩を取る。対して、角を一つ上がるのが、公式戦ではよく指される手だ。しかしやねうら王は桂を上がる。
 この最近では変わった戦法を、やねうら王はよく指してくる。稲葉は事前の研究で、10回のうち3~4割はこの戦型になることを確認している。
 放映された対局では、この後、注目すべき進行があった。

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ドキュメント コンピュータ将棋

松本博文

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