3月18日、インターネット広告推進協議会(JIAA)から、衝撃的な発表がありました。「インターネット広告倫理綱領及び掲載基準ガイドライン2015年3月改定版」、通称「ネイティブ広告の運用指針」です。
メディア業界の人たちはさぞかし注目しているのだろうと思っていましたが、残念ながらこのニュースを取り上げた既存のマスメディアは、NHKと毎日新聞しかありませんでした。それ以外ではITmediaやCNETなどのネットメディアがストレートニュースとして報じた程度で、他の大手紙、通信社などは、解説はおろか、発表そのものすら報道していません。
おそらくメディア業界の多くの人が、このガイドラインを単なる「広告業界の新しいルールが1つできた」程度にしか思っていないのでしょう。
しかし、実はそうではありません。このガイドラインは、2〜3年のうちにネットメディアのみならず、現在のメディア業界全体が根本からひっくり返るほどの、とてつもない影響を及ぼすことになるはずです。なぜそう言えるのか、またどんなことがこのガイドラインによって起きるのかについて、ご説明します。
さりげなく書き込まれた「広告」の新定義
そもそも「ネイティブ広告」とは何かについては、昨年5月のこのコラム「『広告』するのは、企業ではなく読者だ」でも取り上げたので、そちらを読んでいただければと思います。JIAAの定義をそのまま引用すると、「デザイン、内容、フォーマットが、媒体社が編集する記事・コンテンツの形式や提供するサービスの機能と同様でそれらと一体化しており、ユーザーの情報利用体験を妨げない広告」のこととなります。
このガイドラインは、こうしたネイティブ広告について、ネットメディアが「広告として反社会的だったり、犯罪を美化・助長していたり、他人を一方的に攻撃・差別・嘲笑したり」といったことのないように「審査」して掲載し、また記事と区別がつくように、必ず「広告枠内に『広告』『PR』『AD』などを表記する」ことを強く推奨しています。
JIAAのガイドラインに強制力はないものの、同団体には新聞・雑誌などのメディア企業や広告代理店、配信プラットフォームなど、メディア業界のほとんどの企業が加盟しており、少なくとも加盟社である以上はこのガイドラインを順守するのは当然でしょう。
さて、それではこのガイドラインがなぜただの「広告のルール」の1つではなく、メディア業界全体をひっくり返すほどのインパクトを持つのでしょうか。
その理由は、このガイドラインの脚注に書かれている「広告」の定義にあります。
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