去る3月14日、第2回 日経「星新一賞」の授賞式が国立新美術館(東京都港区)の講堂にて開催された。同賞は、10,000文字以内(一般部門)のショートショート/短篇小説の公募新人賞(中学生以下を対象とするジュニア部門は5,000文字以内)。
公式サイトには、「理系的発想を問う文学賞」とあり、応募要項にSFの文字はありませんが、まあ、事実上は掌篇SFの新人賞ですね。
その証拠に、今回の最終選考委員6人のうちのひとり、ロボット工学者の石黒浩氏は、同賞公式サイトに寄せた文章で、
「技術開発の発想にはSFから生まれたものが少なくありません。私自身もSFのファンで、SFから多くのヒントと研究のモチベーションをもらっています。このたびは、そのSFを審査するという立場を与えていただき大変光栄に思います」と書いている。
募集する作品の枚数規定で言うと、2009年に始まった創元SF短編賞が40字×40行で10枚以上25枚以内、2012年に始まったハヤカワSFコンテストが400字詰原稿用紙100~800枚程度なので、長さ別に、3種類のSF新人賞がうまく棲み分けしている格好になる(改行の量にもよるが、40字×40行×10枚の小説は、正味の文字数だと10,000文字ぐらいになります)。
仄聞するところによると、もともと星ライブラリ代表の星マリナさん(星新一の次女にあたる)と、作家の瀬名秀明氏がいっしょに知恵を絞って、 “理系文学” の新人賞というグランドデザインを描き、鏡明氏の協力のもと、電通を介して日経が冠スポンサーにつき、いよいよプロジェクトが動き出した——という経緯だったらしい。このご時世に新しい賞のスポンサーを見つけるのはなかなかたいへんですが、 “理系文学” というフレーズにそれだけ訴求力があったということか。
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