あれはガンダムとか、ナウシカとか、ラピュタとか……

時間が止まった世界の中で、どこにでもいそうな一家と謎の宗教団体が、凄惨な戦いを繰り広げるというエッジの効いたマンガ『刻刻』。さまざまな謎と設定が持ち込まれながらも、ラストに向かって鮮やかな展開を見せます。作者の堀尾省太さんへのインタビュー第2回目は、いよいよ“完全ネタバレ”で創作の秘密に迫ります。(全3回、構成:西中賢治)

「止界術」をめぐる戦いの中で、主人公の樹里を中心とした家族のあり方が描かれる。

主人公・樹里の持つ特殊能力。人間の体内に入った「霊回忍タマワニ」を追い出すことにより、強制的に人を「止界」から退場させられる。(『刻刻』4巻 )

— 『刻刻』の主人公の樹里は、すごく強い女性ですよね。物語の結末も、その樹里の女性としての行動によってもたらされます。もともと、女性を中心に描くことにこだわりがあったんですか?

堀尾省太(以下、堀尾) いや、ぜんぜんそういうのはないんですけど……。ただ、動く前にいろいろ考えて、動けなくなるような人間って、マンガの主人公に向かないと思ったんで、ああいう決断力のあるキャラクターにしました。
 それがなぜ女性だったかというと、女性という自分とはまったく別の生き物に設定することで、自分だとやらなそうな思考や行動を、割り切ってさせられると思ったんです。

— なるほど。物語の途中から樹里やその甥の真が特殊能力を発揮しますよね。こうした設定は最初から考えてたんですか?

堀尾 後から考えたような気がするんですけど、今読み返すと、最初から設定としてあったような気もするし……。

担当編集(以下、担当) 樹里の能力は、連載を始める時から考えていたと思いますよ。このインタビューはネタバレ企画だから言っちゃってもいいと思うんですけど(笑)、ぶっちゃけ、甥っ子の能力とかは、かなり後から考えましたよね。

— 後から設定を足していくことに、描き手として不安はないですか? 「ご都合主義に見えないか」とか。

堀尾 それはありますね。でも、話を進めるためにはもうそうしなきゃいけなくなったというか……(苦笑)。

担当 昔は、マンガの中で偶然や都合のいい「魔法」は1回、ないし2回までしか使っちゃいけないって言われてたんです。でも、最近は何度か「魔法」を被せても読者に許されるようになってきた感じがあります。それに、堀尾君は画力もあるし、人物描写がすごく緻密なので、そこはカバーできるだろうと思ってました。

堀尾 僕としては、設定が変わっても、キャラクターそれぞれの考え方を尊重することだけには、こだわっていました。樹里が真のために決断するように、「誰がなんのために動くのか」っていう部分を大事にした、というか。

— そうした人間のドラマがありつつ、「神ノ離忍カヌリニ」という異形のモノも登場します。

「神ノ離忍」は、時間の止まった世界「止界」の秩序を守るために存在するとされる。(『刻刻』3巻 )

— この作品の中で一番、現実離れした存在ですが、見た目もすごいですよね……。

堀尾 これは、いろんなもののイメージをくっつけて作っているんです。『機動戦士ガンダム』シリーズのビグザムとか、ノイエ・ジールとか……。あと、宮﨑駿さんの原作マンガの方の『風の谷のナウシカ』の、あの巨神兵の質感だけを借りたり。樹木っぽいところは、『天空の城ラピュタ』のラピュタですね。ラピュタって、1本の巨大な樹のような形をしてるじゃないですか。

— 確かに、その全部にどことなく似てる! 物語の中盤で、樹里たちと敵対する佐河が……

【未読の人は注意! ここから終盤のネタバレをします!】

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完全】『刻刻』と止まる世界の果てに【ネタバレ】堀尾省太インタビュー

堀尾省太

最終巻が出版された後も、マンガ読みの間でじわじわと支持が広がっている『刻刻』(こっこく)。時間が止まった世界「止界(しかい)」の中で、どこにでもいそうな一家と謎の宗教団体が凄惨な戦いを繰り広げます。デビュー作にしてこの骨太なマンガを描...もっと読む

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hiro88x |【完全】『刻刻』と止まる世界の果てに【ネタバレ】堀尾省太インタビュー|堀尾省太|cakes(ケイクス) https://t.co/JQm2OsRayk 9ヶ月前 replyretweetfavorite