みんな、お金の話をしすぎている
川崎貴子(以下、川崎) 前回、社員のプライベートが充実している会社でこそいい製品が生まれるという話がありましたが、食やファッションを楽しもうという好奇心を持った男性が全体的に減っている気がします。食事はファーストフードでいいし、服もファストファッションでいい。旅行はテレビで世界遺産でも観ていれば十分。もうね、「そんなに家にいたいの? そんなにゲームしてるのが楽しいの?」って、詰め寄りたくなりますよね(にっこり)。
藤野英人(以下、藤野) こ、こわいです(笑)。きっと僕らは、もっと身体感覚を取り戻したほうがいいんですよね。身体感覚を取り戻すって、なにもジャングルに行けとかいうことじゃなくて、自分の五感を使ってまわりを感じ取ることなんです。近所の商店街を歩くのだって、感覚を研ぎ澄ませれば、いつもと違うものが発見できるかもしれない。そういうことって、やっぱり社会のメッセージとして発するべきだと思うんですよ。
川崎 そうですね。
藤野 アベノミクスとか、格差是正とか、声高に叫ぶのはいいのですが、みんなお金の話ばっかりしてるんですよね。「もっと金が欲しい」か「おれに金を分けろ」のどっちかです。そうじゃなくて、人生を楽しむ、パートナーのいる生活っていいよね、子育てって大変だけどすごく楽しい、そういうことのほうが重要で。そこには、必ずしもたくさんのお金は必要ないんです。
川崎 やはりモデルケースが不在なために、みんなどうやって人生を楽しめばいいかわからないんだと思います。例えば雑誌で、こういうかっこいい50代がいて、楽しくファミリーと休日を過ごしてます、仲間とトライアスロンしてます、みたいな特集があるとします。でも、そこに載ってる人って大抵、社長とかトップクリエイターなんですよね。
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