セックスは代替可能な娯楽だった
藤野英人(以下、藤野) 1993年に、不二ラテックスというコンドームを製造している会社を訪問したんですよ。当時は、コンドームがコンビニで流通するようになって、株価がどーんと上がった時期だったんですね。そのとき不二ラテックスの社長が、「セックスっていうのは代替可能なもので、今うちの会社の最大の壁はセックスレスなんだ」とおっしゃってたんです。
川崎貴子(以下、川崎) セックスは代替可能、なんですか。
藤野 性欲って、食欲と睡眠欲に並ぶ三大欲求だと言われていますよね。でも、食事と睡眠は健康を維持するために欠かせませんが、セックスしなくても人間は死なないんですよ。
川崎 たしかに。子孫を残すためには必要ですが、日常生活ではなくても支障がないものですね。
藤野 1990年まで放送されてたちょっとエッチな「11PM」という番組があるんですけど、昔のお父さん・お母さんって、夜は特にやることがないから「11PM」でも観て、気分を盛り上げて(笑)一緒に寝てたんです。でも、だんだん飲食店などの店舗が深夜営業するようになり、お父さんの帰りが遅くて、お母さんが先に寝るということも多くなっていった。一緒に寝る時間が減れば減るほど、セックスの回数は減る。そして、コンドームの消費量も減ります。それを、不二ラテックスの社長は危惧していたんです。