板尾創路【後編】続編もいいけれども、次は今田耕司の書く『今田日記』が読みたい

芸人、俳優、映画監督など幅広いジャンルで活躍する板尾創路さん。そんな板尾さんが2005年1月1日から自身の日々に起こった日常を書き綴ってきた日記『板尾日記』の最新作が発売されました。10年目、10冊目にして、なんと最終巻になってしまうという本書についてはもちろん、板尾さんの仕事との向き合い方や10年間日記を書き続けてきたことに対する率直な感想などを伺いました。

担当編集者の太鼓判!

10冊目の刊行にあたり、10年間一日も欠かさず書き続けてくださったこと、またお仕事の都合で移動の多い板尾さんがノートを失くさずにいらっしゃったこと(日記は手書きで、数ヶ月に一度コピーをいただいていました)、この二つを板尾さんに心より感謝したいと思います。 何があっても、何も無くても日記を書き続けるということの楽しさや大切さを教えていただきました。12月31日に綴られている板尾さんの感覚は、10年間並走してくださった読者の方にもあるような気がします。

(リトルモア 担当編集)

日記を書くことで余計に感じた、40代の時間経過の早さ

— 今回の『板尾日記10』は2014年の1年間の板尾さんの日常の記録なわけですが、2014年はどんな年でしたか?

板尾 去年はとにかく忙しかったなぁ。実際に動いているときはあまり感じないんですが、日記として読んでみると特にそう思いますね。もう最近は1年経つのが早いですよ。

— 舞台や映画、レギュラー番組など、ほとんどお休みもなさそうでしたね。ということは、充実した1年だったということでしょうか?

板尾 そうですねぇ。でも、これがずっと今後も続くとなるとちょっとしんどいなっていうところです。もう若くないので、あまり働き過ぎるのもどうかなと思いました。

— さきほど「1年が過ぎるのが早い」という話をなさってましたが、10年間を日記で振り替えてみたときはどう感じましたか?

板尾 そうですねぇ。10年間もあっという間でしたね。もう40代ですから、やっぱり時間の流れ方が20代の頃とは全然違いますよね。特に日記がこういう本になってしまうと、余計そう思います。この本を見れば僕の1年間なんてほんの数時間で読めるので、やっぱりますます「あっという間だったな」と思ってしまいます。

— 日記を書いていることで、より深く時間の早さを実感されたということでしょうか。

板尾 そうですね。あとは、年をとってくると、若い頃に比べると生活に「無駄がない」んですよね。

— といいますと?

板尾 たとえば、子どもの頃の夏休みが長いか短いかっていうと、その年になにをしたかによって違うし、年齢によっても変わってくると思うんです。初めての体験をすることが子どもの頃は多かったから、印象深くて記憶にも残るんだけど、大人になってくるとだいたいのことは経験しているから、「これには何時間かかるな」「この後の展開はこうなるんだろうな」となんとなく計算できるし、予測がついてしまうんですよね。

— なるほど。

板尾 だから、日常生活に無駄が少ないので、時間が早く過ぎる感覚にもつながってくるんだと思います。ただ、短くなった分1日1日を若い頃よりはちゃんと生きて行けているのかなとは思います。

役者になってから、余計一日の時間が短くなった

— ちなみに、10年で一番長い一日とか言われて思い浮かぶ日はありますか?

板尾 え、それはわからんなぁ……。本当に1日はあっという間ですよ。特に、役者の仕事なんかしていると、一日がすごく早い。

— それは、なんでですか?

板尾 俳優の仕事はスケジュールがタイトなのと、やることが膨大にあるからだと思います。たとえばロケだったら、日の出から日の入りまでの短い時間に終わらせなきゃいけないという時間制限がある。冬場は夏に比べて日照時間も少ないから、余計短く感じます。だから、気づいたらまだほんの数カットしか撮れていないなんてこともしょっちゅうありますからね。

— たしかに、天候状態なんかにも左右されそうなので、時間の制約は大きそうですね。

板尾 そうですね。役者さんをはじめ、映像関係の仕事をしている人にとっては、どんどん日が短くなっていく感覚は絶対に持っていると思います。

— お仕事としては、いまは役者さんの割合が増えているんでしょうか。

板尾 いまは、半分ぐらいは役者の仕事だと思います。下手したら、8割ぐらいはそうかもしれませんね。

— 芸能界は一般の人の生活に比べて変化が激しくて刺激的な印象があるんですが、それも関係しているかもしれないですね。規則的な生活に憧れたりしますか?

板尾 いや、僕らの場合は、一般の会社にお勤めの人のように決まった時間に決まった仕事とかをすることに対してすごく窮屈に感じてしまう人が多いような気がします。だから、ブーブー文句を言いながらも、毎日違う新鮮な感じを体験できるのがいいんでしょうね。

 もちろん一方で、スケジュール管理や現場によっていろいろ覚えなきゃいけないことがあったりして、大変なんですけれど。でも、結局はそういうのが好きでやっていて、それを楽しんでいるんだと思います。

— あと、『板尾日記』には板尾さんのお仕事に対する考え方もたくさん書かれているので、お笑いの若い人たちなんかがこの本を読んで勉強したりしてもいいかもしれないですね。

板尾 直接後輩から感想をもらうようなことはほとんどないんですけれども、多分気になっている人は多いんじゃないでしょうかね。僕はあまり自分の感情を表に出さないタイプなので、パッと見では機嫌が良いのか悪いのかわからないと思うんです。

 だから、ちょっと一緒に仕事した人なんかは「このとき、板尾はどう思っていたんだろう?」と調べるために、読んでいるかもしれないですね。

見せない部分に共感する人がいるから、豊かな気持ちになれた

— 10年間、お仕事の話や娘さんをはじめご家族の話など、赤裸々に日記を書いてきたことで、読者や周囲の方の反応はいかがでしたか?

板尾 誰だって自分のことをなんでも全部他人に話しているかというとそうでもないと思うんです。仲の良い人にしか話さないこともあるし、自分の内面だけにとどめておくこともある。『板尾日記』には、そういう僕の内面も書いているので、読んでくれた人が親近感を持ってくれることが多かったです。

— たしかに、テレビではよくお顔を拝見してますが、日記で知る板尾さんはテレビで見せる顔とは別の「すぐ隣にいる人」みたいな親近感がありました

板尾 実際、僕の日記を読んで、辛いことが書いてあれば心配をしてくれる人もいれば、いいことがあれば喜んでくれる人もいました。日記を通じて、僕に会ったことがない人から「僕のことをすごく身近に感じられた」って言われたときは、すごく良かったなぁと思いましたね。日記を通じて、すごく豊かな気持ちになりました。

— でも、10年間も続いたこの日記が、本当に今回で最後かもしれないと思うと本当に残念です。

板尾 そうですねぇ。しばらくは休みますけども、もしかしたらどこかで1年間だけ「また『板尾日記』を出そうかな」と思うかもしれません。需要があれば、そういう可能性もありますよ。

— 楽しみです!

板尾 ただ、僕としては誰か別の人がこれを引き継いでくれたらいいなぁと思っているんですよ。そういえば今田耕司が日記を書きたいと言っていたので、それは読んでみたいです(笑)。あいつは僕の同期なので、毎年いつも読んでくれています。本当にズケズケ日記について聞いてくるのはあいつぐらいですよ。「これ、黒塗りになっているところ、本当は誰なん?」とか。

— それはぜひやっていただきたいですね! 最後に、日記が終わったいまだからこそ、新たに始めたいことなどがあったら、教えてください。

板尾 まだそんなに決まってないんですけれども、子どもの絵本を頼まれていますね。絵はプロの作家さんに描いてもらって、僕はお話を考えるんですけれども。いつ出るかとかはわかってないんですが、それは難しいながらに楽しかったです。

— それは楽しみですね。絵本が出る頃、ぜひまたお話を伺わせてください! 今日はどうもありがとうございました。


(おわり)

板尾創路(いたお・いつじ)

1963年大阪府生まれ。高校卒業後、20歳でNSC(吉本総合芸能学院)に入学。4期生として卒業、心斎橋筋2丁目劇場に出演し始める。86年蔵野孝洋(ほんこん)と130Rを結成し、2丁目劇場収録の『4時ですよ~だ』に出演。89年度ABCお笑い新人グランプリ、第10回 優秀新人賞(諸芸部門)を獲得。91年からは『ダウンタウンのごっつええ感じ』出演を機に東京に進出。芸人としてだけでなく、俳優としてのオファーも多数。最新作に映画『振り子』やNHK連続テレビ小説『まれ』にも出演。監督作としては『板尾創路の脱獄王』、『月光ノ仮面』なども手がける。

構成:藤村はるな 撮影:渡邊有紀


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LittleMoreWEB webサイトcakes(ケイクス)で、10年間書き綴った『板尾日記』について、 4年以上前 replyretweetfavorite

consaba 書いた人に聞いてみた。 4年以上前 replyretweetfavorite