10代の頃、私は「特別になりたい」子どもだった。
まず、目立ちたがりや。そして、偉そうな態度。他人と一緒はいやだ、お前らなんかと一緒にするな、と息巻く一方、自尊心は低くて、いつも周囲の目を気にしていた。自分と周囲のずれに敏感なのに、ずれをわざと起こそうとして、露悪的にふるまう。そういう子どもにとって、学校は針のむしろだった。
私が中学にいかなくなるのに、さして時間はかからなかった。
親も先生も、あたふたしていたのは覚えている。その頃、私は親を強烈に憎んでいたけれど、そのことを表現できない、へたれな子どもだった。へたれなので、自分の中に溜め込んで、体調の悪さに変えて、親を困らせていた。
あたふたの果てに、かつぎこまれたのは総合病院の精神科だった。精神科には二種類の先生がいる。「お薬」をくれる精神科医の先生と、話を聞く役目のカウンセラーの先生だ。私は前者のほうには決して心を許さなかったけれど、後者の先生には、心を開いていた。
前田先生は、当時、フリーでカウンセラーをしていた、50過ぎのおばちゃんだ。いつも、ヒッピーみたいなとんちんかんな恰好をしている。娘が不登校をやったのをきっかけに、カウンセリングの世界に入ったのよー、と笑いながら言っていた。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。