意識高い系って、何だ?—vol.1

「意識高い系」という言葉をご存知ですか? それは、向上心はあるがどこか空回りしていて、しかもそれに気づいていない「人生の遭難者」を指すネットスラング。この春から、NHK BSプレミアムで「意識高い系」を題材にしたドラマも始まり、さらに全国に広まろうとしているようです。そこで「意識高い系ウォッチャー」であり、『「意識高い系」という病』で知られる常見陽平さんが、あらためて「意識高い系」について総括! まずは具体的な特徴を解説します。

ついにドラマ化した「意識高い系」

 いやはや、実に愉快だ。なぜか? 3月3日よりNHK BSプレミアムでドラマ『その男、意識高い系。』がスタートしたからだ。「意識高い系」と、それに振り回される上司、それに思わず(騙されて?)期待してしまう経営者など、日本の職場の今を描いたドラマである。

 私はこのドラマに超絶、期待をしている。「意識高い系」という言葉を一躍、全国区にする可能性があるからだ。おそらくネット上では耳にしたことはあるだろうし、もはや揶揄する風潮も広まっているが、職場に、いやソーシャルメディア上にも跳梁跋扈する彼ら彼女たちは、実は今、そこにある問題である。私自身も学生団体主催のイベントや、就活の合同説明会での講演会、パーティーなどで、多くの「意識高い系」に遭遇してきた。

 あらためて説明すると、「意識高い系」とは、簡単に言うならば、向上心は高く、そうした言動も目立つが、何か空回りしていて、実力・行動・結果が伴わず、しかもそれに気づいていない人達である。「なりたい自分」難民、人生の遭難者と言ってもいい。より具体的には、次のような特徴がある。

SNS、交流会、ビジネス書……「意識高い系」の特徴とは

【プロフィールの誇張・詐称】

 Twitterで、こういうプロフィールを見たことはないか?

上場IT企業勤務/慶應経済/社会起業家見習い/Stay hungry,stay foolish. /勉強会BENKYOなう代表/学生時代はビジコン荒らし/文京区のシェアハウス在住/どこまで自由になれるか冒険中/ツイートは所属する団体とは関係ありません/フォロー・リムーブご自由に

 このように、ソーシャルメディアにおけるプロフィール欄などを、びっしりと書き込むのが「意識高い系」のわかりやすい特徴。あたかも芸能人や起業家と見まごうようなプロフィール写真を掲載(実際は、友人に一眼レフで撮ってもらったレベルのものを激しく加工)。聞いてもいないのに、「座右の銘」「ビジョン」などを書く。

 なお、諸々香ばしいのだが、個人的には実は「上場IT企業勤務」という表記にこそ注目してもらいたいと思っている。勤務先に迷惑をかけないために表記していないというのもあるが、実は、業界の中で中堅くらいのポジションの企業ということも。社名を言うのにややコンプレックスがあるものの「上場」と書くことでなんとか自分のプライドを保っている。

 出身(在籍)大学名は、帝大、早慶上智、ICU、一橋、東工大、神戸大、関関同立、MARCHくらいまでだったら書くが、それ以外の場合、書かないことも。この例にあるとおり、慶應の場合、経済、法学部、そしてSFCの2学部などの場合はドヤ顔で書く。学歴ロンダリングで出身大学よりもステータスのある大学院を出ている場合、そちらの方だけ表記する。

【名言、良記事の受け売りなどSNSでの意識高い発信】

 「Stay hungry,Stay foolish」など、ソーシャルメディア上で意識の高い名言を連発。さらに著名人の言葉をあたかも自分の言葉のように発信することもある。他、自分より若い人に対して「訓示」のようなメッセージを発信することも。特に年末から春にかけては、1年の総括、1年の抱負、成人式、受験、就活解禁、卒業式、入学式など、先輩風を吹かせることができるイベント満載なので、意識高い系ウォッチャーとしてはたまらない。

 話題の記事(主にネット界、ベンチャー、社会起業家関連のニュースで話題性の高いもの)に、「楽しみですね」などと解説になっていないようなコメントをつけてツイートすることも。他にもお役立ち記事、気になる記事などをソーシャルメディアで紹介するなど「キュレーション」風のことをやってみたりもするが、たいていは影響力の強い人のツイートをパクったもの。しかも、リンク先の記事を読んでいなかったり、データの信ぴょう性をチェックしていなかったりするのが痛い。

 積極的に著名人に絡むというのも特徴。実際著名人のアカウントをみていると、やたらとメンションしまくり、なんとか承認してもらおうとしている人や、著名人のFacebookにやたらと意見、コメントを書き込んでいる人を見かける。著名人と知り合いになりたいという意味もあるし、そのコメント欄ならみんなが見てるだろうという売名行為の意味もある。

【やたらと横文字を使う】

 「ロジカルシンキング」「ファシリテーション」「ブランディング」「フルコミット」「イノベーション」「イグジット」……意識高い系がやたら使いたがる横文字だ。

 もっとも、意味がわからず、とりあえず使っていることも多い。「◯◯先輩の会社、イグジットに成功して、がっぽり儲けていて。彼のビジョンっていつもロジカルでエモーショナルで、ブランディングも上手かったよね。イノベーションを起こしていたしね」なんて言われた日には、すごい話のようで、具体的に何を言っているのかが分からない。

【人脈自慢】

 人脈作りに熱心。何かの機会に必ず名刺交換。知りもしない著名人にもFacebookでメッセージを送り、友達申請を嘆願。人脈の数、質を自慢しまくる。しかも、ちょっと知っているレベルで「マブダチ」「メンター」とか言い出す。Facebookでつながっていることを「◯◯さんと友達」などと自慢することも。

【勉強会・異業種交流会バカ】

 勉強会や異業種交流会をやたらと開く。しかも、スタートアップ企業という名の零細企業の社長、役員(実際は年収は大企業の新人並み)を連れてきて「◯◯さんもやってくる飲み会」などと自慢をする。やたらとFacebookでイベントの招待を送ってくるのも意識高い系の特徴だ。ぶっちゃけ、皆さんもつながった途端、イベント招待をガンガン送られてウザいと思ったことがないだろうか。

 会合が終ったら「業界を超えて100人が集まるイベントをやりきった」などと自慢する。その時の様子は、もちろんFacebookにアップし、タグ付けしまくる。

【質問で自己PRをする】

 本人主催にしろ、他のイベントにしろ、セミナー、勉強会などで限りなく自己PRに近い質問をすることも特徴。まずは「◯◯社の◯◯です。本日は大変貴重なお話をありがとうございました」という「キチョハナカンシャ」と言われる謝辞から始まり、延々と自分語りが始まったあと、どうでもいい質問をする。

 質問の場を、自分が発言する場にして悪用することも特徴。かつて、早稲田で開いたキャリアに関するイベントでは、こんな質問をする学生がいた。

 「早稲田大学3年の○○です。あの、私は生活を保障する上でも、生き方の多様性を実現する上でもベーシックインカムの導入が必要だと考えています。現在、文字通りのベーシックインカムを導入している国はまだありませんが、今後、誰もがいきいきと働ける社会を作るためにも、人が死なない社会を作るためにもこれが必要だと思うのですが、皆さんはどう思いますか?」

 一応、生き方、働き方と無関係ではないが、完全にひとりよがりな発言だ。たまたまイベントのハッシュタグで彼のツイートを発見したが、「ちゃんとベーシックインカムについてアピールしてやった。言い続けることが大事」などと書かれていた。すべては自己PRなのだ。

【ビジネス書を読みあさる】

 話題のビジネス書を読みあさる。実際は、ちゃんと読めていなかったり「レバレッジ・リーディング」の名のもと、面白そうな部分だけをつまみ読みするレベルなので、質問されるとまるで答えられない。

 さらに、他人からの受け売りをFacebookやブログに書いてしっかりアピール、ビジネスの企画書にも盛り込んだりもする。

 このビジネス書を読んだことも人脈作りにしっかり利用。感想をブログにまとめ、著名人にTwitterでメンションしアピールするなどの努力はもちろんする。

【アレ俺詐欺】

 ちょっと関わったレベルなのに、「◯◯を手がける」とアピール。自分が全てやったかのように言う。今回のドラマでも、ソーシャルゲームを仕掛けたのは自分というように大げさに語っていた。一番、便利な言葉が「関わる」という言葉。ど末端の人間でもこの言葉はすごく聞こえてしまう。

【華麗なキャリア自慢】

 単に仕事が嫌になったり、その場で成果を出せなかっただけなのに、転職しまくっている自分のジョブホッパーぶりを「華麗なキャリア」だと自慢する。

【何においても見栄えを重視】

 衣食住、すべてにおいてソーシャルメディア受けするかどうかがポイント。Facebookにあげた時に見栄えが良いかどうかで考える。安くても、見栄えが良いバルなどでの飲み会を企画。やたらと襟が強調されているシャツを着るのもこいつらの特徴。MacBook Air、iPadなどももちろんアピールアイテム。ただ、お金をすごくかけているかというと、そうでもない。

【漠然とした社会を変えたい志向】

 特にかわいそうな人を助ける、何かルールを変えるというムーブメントにのっかる。ここ数年盛り上がったネット選挙解禁などはわかりやすい例。ただ、この手の話に熱そうで、実際、政治・経済のことはよくわかっていない。だから、IS問題などについては発言しない(というか、できない)。ただ、人質を解放したいとかそういう想いは発信する。

「意識高い系」の解決策はあるのか?

 まだまだあるが、これが意識高い系の特徴とも言えるものだ。こうした人間に心当たりはないだろうか? また、自分に当てはまるところがあると気づいたりはしなかっただろうか?

 今回の『その男、意識高い系。』は、ドラマだけに誇張していると感じる部分もあるが、なかなかいい線、いってると思う。特徴を良く捉えていると思うのだ。

 私は、意識を高く持つこと自体は悪いとは思わない。しかし、空回りしていて、実際に行動と結果が伴わないのだから、たちが悪い。なんせ、目の前の仕事にいまいち力を入れていなかったり、何かあると人のせいにしたりしていて面倒くさい。まだ、「Facebookで一応つながってやったらやたらとイベント申請くるのでうざくて絶対に会いたくない“友だち”」なら、距離を置くだけでOKだが、職場にこういう奴がいたら迷惑だ。

 そうした「意識高い系」という病がはびこるのには、どうした原因があるのか。彼らだけの問題なのか? なにか健全な解決策はあるのか?

 この短期連載では「意識高い系」に関してあらためて集中講義するとともに、どうすれば彼ら彼女たちが健全な社会復帰ができるかどうかを考えることにしたい。


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この連載について

意識高い系」ハルマゲドン—現代社会の勘違い野郎への処方箋

常見陽平

「意識高い系」という言葉をご存知ですか? それは、向上心は高いが何か空回りしていて、実力・行動・結果が伴わず、しかもそれに気づいていない「人生の遭難者」を指すネットスラング。この春から、NHK BSプレミアムで「意識高い系」を題材にし...もっと読む

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hisaya_010279 意識高い系とは ①向上心は高い ②そうした言動も目立つが、何か空回り ③実力・行動・結果が伴わず、しかもそれに気づいていない あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛思い出すと発狂したくなる 約2年前 replyretweetfavorite

rocki141 やっべー、" 2年以上前 replyretweetfavorite

hiroshikatsu ドラマにもなるし本にもなるんだなあ> 2年以上前 replyretweetfavorite

0501Can #意識高い系 #NHKBSプレミアム #その男意識高い系 2年以上前 replyretweetfavorite