第16回】プロの権威

プロ棋士と互角以上の戦いを繰り広げるまでに進化した将棋ソフト。不可能を可能にしてきた開発者たちの発想と苦悩、そして迎え撃つプロ棋士の矜持と戦略。天才たちの素顔と、互いのプライドを賭けた戦いの軌跡。今日までのコンピュータ将棋に関する最前線を追った『ドキュメント コンピュータ将棋』が3月25日発売予定です。本連載では、本書から特に電王戦FINAL出場者たちの素顔や想いの部分を抜粋して紹介していきます。

 電王戦出場に関しては、まず打診があった。
 「出てくれなければ困る。代わりがいない」とも言われた。コンピュータとの対局は、リスクが高い、と思った。人間なのでコンディションに左右され、常に100%の実力が出るわけではない。自分よりも強くて、電王戦出場に適任と思われる若手棋士の名が、すぐに数人は浮かんだ。最後は、そういう棋士が断ったというのであれば、と思って決意をした。自分が出て、自分が勝てばいい。

 プロの権威がかかっている、という点に関しては、永瀬ははっきりと意識している。

「止めるために出てますから。(ソフトは)羽生先生が指すほどの相手ではないと思います。将棋界の宝なわけですから。そういうリスクを背負うべきではないと思います。羽生先生が出るのは、私は反対です。羽生先生が出れば、勝つでしょう。しかし、羽生先生が出るしかない、という状況になるのは、不名誉なことだと思います」

 2014年の将棋界の話題としては、今泉健司のプロ編入試験合格が挙げられる。アマチュアの今泉はプロ公式戦で規定以上の勝ち星をあげ、プロ編入試験の制度開始後、初めて受験資格を得た。さらには編入試験(五番勝負)で若手四段陣を相手に3勝1敗の成績を挙げ、試験に合格している。今泉の試験対局の模様はニコニコ生放送で中継された。ほとんどの視聴者は、今泉を応援していた。

 永瀬はこの結果について「悔しいです」と言う。今泉本人に対する感情ではない。若手棋士が止められなかったという点を言っている。

「悔しいじゃないですか。プロが負けたわけです」

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ドキュメント コンピュータ将棋

松本博文

プロ棋士と互角以上の戦いを繰り広げるまでに進化した将棋ソフト。不可能を可能にしてきた開発者たちの発想と苦悩、そして迎え撃つプロ棋士の矜持と戦略。天才たちの素顔と、互いのプライドを賭けた戦いの軌跡。今日までのコンピュータ将棋に関する最前...もっと読む

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