第14回】真に人間を超えるとき

プロ棋士と互角以上の戦いを繰り広げるまでに進化した将棋ソフト。不可能を可能にしてきた開発者たちの発想と苦悩、そして迎え撃つプロ棋士の矜持と戦略。天才たちの素顔と、互いのプライドを賭けた戦いの軌跡。今日までのコンピュータ将棋に関する最前線を追った『ドキュメント コンピュータ将棋』が3月25日発売予定です。本連載では、本書から特に電王戦FINAL出場者たちの素顔や想いの部分を抜粋して紹介していきます。

コンピュータ将棋の最前線を戦う天才たちに迫った一冊、3月25日発売!


ドキュメント コンピュータ将棋 天才たちが紡ぐドラマ

 以前の開発者たちは、自分の作ったソフトに、自分が勝てなくなったときがうれしかった、という発言をよくしていた。今ではプログラムが完成した時点で最初から勝てない、ということも多い。

 西海枝はチェックの意味もあって、自分が作ったSeleneとよく指す。せっかく作ったゲームなのだから、という思いもある。西海枝には中3の娘がいる。娘はしばしば学校で将棋を指しているという。そこで、父が作ったソフトなのだから、と言って、娘にSeleneと対戦させてみようとする。プロ棋士と勝負をするほどのプログラムである。娘もその強さを知っているので、乗り気ではない。

 コンピュータ将棋が強くなったのは機械学習が大きな理由だ、と言われる。学習というからには参考にすべき対象、教師が必要だ。これまでの学習で参考にしてきたのは、人間の残した棋譜であった。

「これまではプロ棋士の残した棋譜を神として扱ってくればよかった。しかしこれからは、それも疑ってかかる必要があるのかもしれません」
 とApery開発者の平岡は言う。ならば同様に、強いソフトの棋譜を使えばよいだろう、という発想にもなるが、その強いソフトは、人間の棋譜を学んで強くなったわけだから、人間の影響を排除しきれている、というわけではない。そうした人間の影響を排除することに意味を見いだすかどうかは、開発者の間でも姿勢が分かれる。
「コンピュータは人間に学んで強くなったではないか」
 という人間の声を黙らせる必要があるのかどうか、ということだ。

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ドキュメント コンピュータ将棋

松本博文

プロ棋士と互角以上の戦いを繰り広げるまでに進化した将棋ソフト。不可能を可能にしてきた開発者たちの発想と苦悩、そして迎え撃つプロ棋士の矜持と戦略。天才たちの素顔と、互いのプライドを賭けた戦いの軌跡。今日までのコンピュータ将棋に関する最前...もっと読む

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rieko_w 「最終的にはですね、人間の棋譜を使わないで、ルールだけ知っているという状態から強くさせたいんです。いけるはずなんですよ」(西海枝昌彦氏) https://t.co/phPzGJaPdw 松本博文『ドキュメント コンピュータ将棋』 4年以上前 replyretweetfavorite

suzuken2002 プログラマーでもあるGreg EganのSF、『順列都市』等のイメージ。西海枝昌彦氏「最終的にはですね、人間の棋譜を使わないで、ルールだけ知っているという状態から強くさせたいんです」真に人間を超えるとき| 4年以上前 replyretweetfavorite

ginnan81 Seleneの西海枝さん登場回。 https://t.co/DgzliD9XLy https://t.co/KliD3iDMww https://t.co/VFnehyGUuY https://t.co/dtb7aecJhf https://t.co/vSZB3bnXx9 4年以上前 replyretweetfavorite