第12回】強くなる過程の楽しさ

プロ棋士と互角以上の戦いを繰り広げるまでに進化した将棋ソフト。不可能を可能にしてきた開発者たちの発想と苦悩、そして迎え撃つプロ棋士の矜持と戦略。天才たちの素顔と、互いのプライドを賭けた戦いの軌跡。今日までのコンピュータ将棋に関する最前線を追った『ドキュメント コンピュータ将棋』が3月25日発売予定です。本連載では、本書から特に電王戦FINAL出場者たちの素顔や想いの部分を抜粋して紹介していきます。

コンピュータ将棋の最前線を戦う天才たちに迫った一冊、3月25日発売!


ドキュメント コンピュータ将棋 天才たちが紡ぐドラマ

 西海枝は、2014年の選手権ではオンライン学習という手法を採用してみた。半年後の電王トーナメントは、わりとオーソドックスに5万局の棋譜を使ってみた。それが強かった、というわけだ。

 電王トーナメントの本戦2回戦、これを勝てばSeleneの電王戦出場が決まる、という一番で、対戦したのはN4Sだった。西海枝にとっては皮肉にも、仲の良い横内健一が開発したソフトである。両者の対戦は、序盤から見たこともないような展開になった。
「わざと定跡データを切ったんです。それを切れば、すぐに未知の局面になることを、私は知ってますので。定跡データではなくて、評価データで戦いたかったんです。これで負けたんだったら、本当の負けなので、しょうがないやと思って」

 評価関数がソフト本来の実力である、という発想だ。人間同士の対局であっても、こうした意気込みでの対局はしばしばある。研究勝負から離れて、真の実力と言える大局観で勝負をしようではないか、ということだ。

 そして力と力の勝負を制したのは、Seleneだった。

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ドキュメント コンピュータ将棋

松本博文

プロ棋士と互角以上の戦いを繰り広げるまでに進化した将棋ソフト。不可能を可能にしてきた開発者たちの発想と苦悩、そして迎え撃つプロ棋士の矜持と戦略。天才たちの素顔と、互いのプライドを賭けた戦いの軌跡。今日までのコンピュータ将棋に関する最前...もっと読む

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コメント

arishiki このコラムで西海枝氏が語ったように、独自の手法で作っていたが故に稀なバグが出てしまったということなのかな。ソースを見てないけど。 > 4年以上前 replyretweetfavorite

rieko_w 「準決勝のponanza戦は、Seleneの完敗に終わった。(中略)本来足すべき設定にしなければならないところを、逆に引いていたことがわかった。「間違っていましたね。(中略)そういうこともあるんです。」」(西海枝昌彦氏)  https://t.co/lTAHrrmbP1 4年以上前 replyretweetfavorite

rieko_w 「Seleneが激弱になっています、というときにはですね。マニアの方なら、ああ、何か新しいことに失敗したんだな、と思ってくれるんです」(西海枝昌彦氏)  https://t.co/lTAHrrmbP1 松本博文『ドキュメント コンピュータ将棋』 4年以上前 replyretweetfavorite

jigendaddy まさかこれほどロックな方だったとはなあhttps://t.co/my0yYA8N5A 4年以上前 replyretweetfavorite