第11回】Seleneのオリジナリティ

プロ棋士と互角以上の戦いを繰り広げるまでに進化した将棋ソフト。不可能を可能にしてきた開発者たちの発想と苦悩、そして迎え撃つプロ棋士の矜持と戦略。天才たちの素顔と、互いのプライドを賭けた戦いの軌跡。今日までのコンピュータ将棋に関する最前線を追った『ドキュメント コンピュータ将棋』が3月25日発売予定です。本連載では、本書から特に電王戦FINAL出場者たちの素顔や想いの部分を抜粋して紹介していきます。

コンピュータ将棋の最前線を戦う天才たちに迫った一冊、3月25日発売!


ドキュメント コンピュータ将棋 天才たちが紡ぐドラマ

 2012年、Seleneは初めて世界コンピュータ将棋選手権に参加した。学習に使う棋譜の数は、5万ぐらいが一般的だが、西海枝は違うチャレンジをしてみたいと思い、3千から4千ぐらいに減らした。大山康晴、中原誠、谷川浩司、羽生善治と、永世名人4人の棋譜にしぼった。人間の学習法ならば、効率的とほめられそうだ。しかし簡単に「過学習」という現象が起こった。永世名人の棋譜で強くなるどころか、めちゃくちゃに弱くなった。しかし、そこであきらめずに試行錯誤を重ねた。理論的には、レーティングの高い指し手の棋譜を使えば、それだけ強くなるはずである。最終的には、Bonanzaとほぼ互角というところにまで強くした。

 一次予選は7戦全勝の1位で突破したが、二次予選では敗退した。

「これはちょっと愚痴になるんですけどね」
 と西海枝は苦笑する。
「みんなが興味あるのは、勝つか負けるかだけなんです。少ない棋譜で強くするのは、かなり工夫が必要です。他の人にも真似してほしいぐらいなんだけど、なかなかそこをわかってくれないですね」

 将棋ソフトの開発において西海枝は、まず何よりも、オリジナリティを重視する。選手権が終わると、バージョンアップはしないで、毎年新しいテクノロジーを使って、ゼロから作り変えることにした。
「ごく一部のSeleneのマニアの方はですね、今年はどういうのでくるんだろうと、見てくれているわけです。それで今年もがんばろう、と思うんですね」

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ドキュメント コンピュータ将棋

松本博文

プロ棋士と互角以上の戦いを繰り広げるまでに進化した将棋ソフト。不可能を可能にしてきた開発者たちの発想と苦悩、そして迎え撃つプロ棋士の矜持と戦略。天才たちの素顔と、互いのプライドを賭けた戦いの軌跡。今日までのコンピュータ将棋に関する最前...もっと読む

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コメント

kopiapoa_029 【 第11回】Seleneのオリジナリティ https://t.co/qf3EdOT5iA これと次の12回に色々興味深い事が書いてある。開発者の事は10回で触れてる 3年以上前 replyretweetfavorite

ginnan81 Seleneの西海枝さん登場回。 https://t.co/DgzliD9XLy https://t.co/KliD3iDMww https://t.co/VFnehyGUuY https://t.co/dtb7aecJhf https://t.co/vSZB3bnXx9 3年以上前 replyretweetfavorite

flurry @carrion_crow 続編も天才ぶりがひどいです。>『選手権が終わると、バージョンアップはしないで、毎年新しいテクノロジーを使って、ゼロから作り変えることにした』 https://t.co/iAjI1lMvNI 3年以上前 replyretweetfavorite

y_ich 電王戦という枠組みのお陰で、こういう色んな内なるドラマを知ることができるのが何より素晴らしい。 3年以上前 replyretweetfavorite