新訳 世界恋愛詩集

僕は彼女と自由に生きる」ゲーテ

あなたは自由で、そして、本当の快楽が何かを知っていると思いますか? ドイツの文豪・ゲーテが残した「Der wahre Genuß(本当の喜び)」が菅原さんの超訳により現代に甦ります。
詩人天気予報」などで話題の詩人・菅原敏さんが、古今東西の詩人の作品に新訳という名のオマージュを捧げる本連載。気鋭の現代美術家・久保田沙耶さんのアートワークとともにお楽しみください。


とびきりきれいな彼女の心
手に入れるには お金や宝石
いくら積んでも無駄なんだ
愛の喜び 贈ってやらなきゃ
おまえ自身を 払ってやらなきゃ


人間って 本当は自由に生きられる
だけど束縛されなきゃ つらいもの
愛する人のために 熱くなるんだ
そしたら彼女も愛のひもで
ぐるぐる巻きにしてくれる
(だけど義務にくくられちゃ駄目だ)


僕のそばでは すこし天然
世間の目には しとやかで
聖母マリアは知らないけれど
きっとおんなじ愛を持つ
彼女は完璧
強いて言うなら 欠点ひとつ
僕を愛しすぎてるところだけ


ふたりで食事 テーブルの下
彼女が愛する男の足を
自分の足置きにするとき
かじりかけの林檎 飲みかけのグラス
彼女が僕に渡してくれるとき
くちづけ拒むふりをして
いつもは隠してる胸を見せるとき
僕は本当に満ち足りて 本当に自由だ


ときには恋の話しもする
そんなときには 声を聞いていたい
言葉だけで十分 くちづけまでは望まない
彼女に宿る知性から
たえまなく 新しい魅力が
この部屋に溢れだしているから


畏敬の念が 僕を彼女の足下に投げる
よろこびあふれて 彼女の胸によりそう
若いやつには分からない
間抜けなやつには分からない
これが本当の享楽というもの
これが本当の自由というもの


利口になって快楽を求めなよ
そうしたら
いつかおまえが死ぬときに
天使が合唱の輪の中に
連れていこうとするけれど
おまえは彼女に うっとりとしてて
死んだことにも 気がつかないから



「僕は彼女と自由に生きる」

ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(1749-1832)

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

この連載について

初回を読む
新訳 世界恋愛詩集

菅原敏 /久保田沙耶

あまたの恋を書き残してきた、かつての詩人たちに、新訳という名のオマージュを。『新訳 世界恋愛詩集』は気鋭の詩人、菅原敏による新連載。いにしえの恋愛詩の輪郭を、菅原敏のいまの言葉でなぞっていきます。古い詩集に絵の具を落とし、新たな色で輪...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

natsu88y こういう男性好きだわ。 ファウストは難しくて読み終えられなかったけど、思考は伝わる https://t.co/x5RP7UVYEM 約1年前 replyretweetfavorite

yasuhiko_tanaka 僕は彼女と自由に生きる。 *ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(1749-1832) https://t.co/jkH2sQxiix 3年弱前 replyretweetfavorite

YashinNoMeisou 深夜にこれだけは再ツイートしておく、本当に最高だ 4年以上前 replyretweetfavorite