ファシズム化する石原さとみの唇

「好きな女性タレント」「結婚したい女優」というアンケートがあれば、必ず上位に食い込む石原さとみ。出演映画、ドラマを見ても特に代表作があるわけでもなく、いつの間にやら人気者になっていました。石原さとみがするするっと人気者になれた理由はなにか、そしてそれはなにを意味しているのか。武田砂鉄さんが鋭く考察します。

直接的頻出度ではなく潜在的濃度

「オレがキムタクだったら工藤静香とは結婚しない」「じゃあ誰とするんだよ」という議論のみでジョナサン中野坂上店に3時間も居座ったのは半年前のことだ。最終的に誰かは定まらず、2014年も終盤に差しかかった今、むしろ「キムタクだったら大概の女性と結婚できる」という神通力を信じるほうがおかしいのではないかという議論が盛んになってしまった。それでも続いた「誰とするんだよ」論争の中で、誰からも積極的な推薦を受けていないのに、常に石原さとみが候補になっている状態が続いた。このことは石原さとみの現在を象徴しているのではないかと、後々になって思った。特に代表作があるわけでもない彼女の、いつの間にか強固になったスタンダード感はじっくりと論じられるべきだ。

録画での視聴が増加し、もはや既存の視聴率調査は機能していないという指摘が広がっており、録画視聴をカウントに含める「タイムシフト視聴率」の導入が進められている。CMカット機能で録画して自分の観たい番組だけを見ている人と、テレビを流しっぱなしにしている人とでは、石原さとみの潜在的濃度が大分異なる。これは彼女の直接的頻出度とはマッチしない。彼女はあらゆるCMで、ぶりっ子な振る舞いを色濃く強要されているが、これをキャッチするのは「テレビを流しっぱなしにしている人」だけ。そのタイプだけが集ったジョナサンで生まれていたスタンダード感は、彼女がCMで見せてくる細かな振る舞いの蓄積が生んだのだろう。

いつもテレビの前の男に向かって話しかけてくる

CMでの石原さとみ、いくつか例を挙げてみる。「ちょっと飲んでみ? 間接キッスしてみ?」、「冬はこたつで、クールな美女と冷たいロックが最高ですな。(こたつの下の足を触って)ちょっと、くすぐんないで~」(サントリー鏡月)、「愛されフレグランス!うふっ」(花王フレアフレグランス)、「(髪を振り乱しながら)染みてる~」(ガルボプレミアム)、「あなたの知らない私を見せてあげる」(NTT docomo)など、石原さとみのCMはいつも、画面の前にいる「あなた」に向かって話しかけてくる。とっても大雑把な論評にはなるが、どことなくAV的なのである。

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365日四六時中休むことなく流れ続けているテレビ。あまりにも日常に入り込みすぎて、さも当たり前のようになってしったテレビの世界。でも、ふとした瞬間に感じる違和感、「これって本当に当たり前なんだっけ?」。その違和感を問いただすのが今回ス...もっと読む

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コメント

yamakin1214 石原さとみの存在自体がサブリミナル化しているという考察。おもろい。=> 4年以上前 replyretweetfavorite

noidletime 今月からお試しでcakesの有料会員になったが、武田砂鉄さんの連載「 4年以上前 replyretweetfavorite

sonoko0511 「唇業界が「唇こそ女性のセクシー」を仕組み、そこには石原さとみという絶好のアイコンがいた」: 4年以上前 replyretweetfavorite

the_kawagucci 今週もすばらしい。 4年以上前 replyretweetfavorite