ストーリーだけが人の心を動かす
政治家や大統領の選挙演説がプレゼンなら、もっと身近なところにもプレゼンの実例は転がっているはずだ。
たとえば小学校のとき、全校朝礼や始業式・終業式で「校長先生の挨拶」という時間があったよね?
そこで、みんなに聞いてみたい。
何十回となく聞いたはずの「校長先生の挨拶」で、いまでも覚えている話はどれくらいあるかな?
……もしかすると、なにも覚えてないという人が多いんじゃない?
校長経験者のひとりとして、はっきり言っておきたい。これはきみの記憶力に問題があるわけじゃなく、校長先生の「プレゼン力」に問題があったんだ。
校長先生に限らず、プレゼンやスピーチが苦手な人ほど、マニュアルに頼るんだよね。マニュアル、つまり模範解答にすがろうとするわけ。
「前任の校長先生は、こんな挨拶をしていたな。たぶんそれだったら格好がつくし、自分も同じような話をしよう」
「結婚式のスピーチといえば、これが定番の挨拶だよな。スピーチ集の本にも載ってたし、そのまま拝借しよう」
こうやって、自分の言葉で語ろうとせず、借りものの挨拶でその場をしのぐ。だから誰の心も動かさないし、みんなの記憶にも残らない。
もしもこの本を読み終わったとき、きみの心になにも残らなかったとしたら、それはぼくのプレゼン力が足りなかったということになる。本を通じてメッセージを送ることも、ひとつのプレゼンだからね。
さて、プレゼンには「シミュレーション」「コミュニケーション」「ロジカルシンキング」「ロールプレイング」のすべてが必要だということはわかった。
でも、ここにもうひとつ、重要な要素を付け加えないと、誰もきみの話を聞いてくれなくなる。せっかくの〝納得解〞が、共有されないまま終わってしまうんだ。
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