その答えを「納得」してもらうために
いよいよ最後の5時限目です。
ここまで、シミュレーション(1時限目)、コミュニケーション(2時限目)、ロジカルシンキング(3時限目)、そしてロールプレイング(4時限目)について学んできましたね。
これらはすべて、きみだけの〝納得解〞を導き出すためのものでした。ものごとを観察して、仮説を立て、その仮説をあらゆる角度から検証する。……まるで数学の証明問題を解いていくような作業だけれど、それぞれの意味や意義、また具体的な手法についても、しっかり理解してもらえたんじゃないかと思う。
でも、まだ残された最後のステップがあるんです。
自分だけの〝納得解〞を、「みんなにとっての納得解」にすること。自分の結論を、みんなに受け入れてもらうこと。つまり、答えを共有すること。この作業のことを、ここでは「証明」と呼ぼうと思う。
まずは、なぜそんなことをする必要があるのか説明しよう。
たとえば、数学における〝正解〞って、なにがあろうと絶対に〝正解〞なんだ。
数学が導き出した〝正解〞の前には、王様も大統領も、どんなに偉い人でも従わざるをえない。おそろしい独裁者が「違う! 2×2は8だっ!」と叫んでも、国民から笑われるだけだよね。数学の〝正解〞は覆せないし、だからこそ「数学なんて役に立たない」という話は大きな間違いなんだ。数学的に証明した正しさには、絶対的なパワーがあるんだから。
一方、正解のない、よのなかでの〝納得解〞には、それだけのパワーはない。
きみが導き出した〝納得解〞は、どんなに綿密な検証を重ねていようと、それだけでは「個人の意見」にすぎないんだよね。くやしいけど、そこは認めよう。よのなかにはいろんな価値観を持った、いろんな考えの人がいる。ディベートやロールプレイをするとよくわかるけど、菊の花を見て「きれいだ」と思う人もいれば、お仏壇やお墓を連想して「不吉だ、こわい」と思う人だっている。きみたちだって、友達と好きなアイドルの話をしているとき、「あんなヤツのどこがいいの?」と不思議に思ったりすることあるよね? たとえきみが好きじゃなくても、友達にとっては最高に魅力的なアイドルなんだ。
じゃあ、きみが導き出した〝納得解〞を周りの人にもわかってもらうには、どうしたらいいのか。