善悪を突破するような恋をしろ

吉本隆明さんの著書、『共同幻想論』に記されている「対幻想だけが共同幻想を突破できる」という言葉から、往年の名作映画「第三の男」を思い出すという見城徹さん。そこに登場するシュミットという女性の、倫理を突き破った性愛、そして、見城さんが考える恋愛の定義とは?
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善悪を突破するような恋をしろ

 吉本隆明は『共同幻想論』の中で「対幻想だけが共同幻想を突破できる」と言っている。あなたのためなら犯罪を犯しても構わない。共同体の倫理や道徳、法律を突破してでも、二人だけの性愛を貫きたい。性愛という幻想は、共同体が定めた善悪の基準をジャンプして飛び越えることができる

『共同幻想論』を読み直すたび、僕はキャロル・リード監督の名作映画「第三の男」を思い起こす。ジョゼフ・コットンが演じるホリー・マーチンスはアメリカで作家として活動し、オーソン・ウェルズが演じるハリー・ライムはヨーロッパの闇市場で偽ペニシリンを売りさばいて金儲けをしている。

 ライムの犯罪をやめさせるため、マーチンスはウィーンの観覧車で久しぶりに再会する。だが、ライムはこう言って親友の忠告を突っぱねるのだ。

「ボルジア家支配のイタリアでの30年間は戦争、テロ、殺人、流血に満ちていたが、結局はミケランジェロ、ダ・ヴィンチ、ルネサンスを生んだ。スイスの同胞愛、そして500年の平和と民主主義はいったい何をもたらした? 鳩時計だよ

 ライムとマーチンスが共に好意を寄せる、アリダ・ヴァリが演じるアンナ・シュミットという女性がいる。シュミットは犯罪に手を染めているライムと恋人同士である。マーチンスはなんとか彼女を自分の元へ引き寄せたいから「彼は犯罪に手を染めてるから別れろ。彼は必ず警察に捕まる。俺と一緒にアメリカに行こう」と言う。

 しかし、シュミットはマーチンスには見向きもしない。彼女の性愛は共同体の倫理など突破しているから、相手の男が犯罪者でも地獄の果てまで付いて行きたいのだ

 警察に追い詰められたライムは、下水道を通ってどうにかしてマンホールから外へ逃げ出そうとする。だが、とうとう万事休す。警察と一緒に彼を追ってきた親友の顔を見たライムは、ニコッと微笑んでマーチンスに「撃て」と言わんばかりの顔をする。その時の表情が胸に焼き付く。銃声が響き渡る。映画でははっきり描かれていないから誰が撃ったのかは解らない。ライムの葬式には、マーチンスもシュミットもやって来た。埋葬が終わると、ヱビスビールのCMにも使われているツィターという楽器の有名な曲がかかる。

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たった一人の熱狂—仕事と人生に効く51の言葉

見城徹

「仕事」とは何か、「人生」とは何か。「圧倒的努力」「圧倒的結果」とはどのレベルを指すのか。「金」は全てか、「愛」とは何か、「死」とどう向き合うか。 数々の伝説的ベストセラーを生み出してきた幻冬舎代表取締役社長・見城徹さん。...もっと読む

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コメント

Doranko_murr 今更だけれど、恋にいい悪いはないんだよね。 約5年前 replyretweetfavorite

JET0220 こういう想いって大切だよ。 https://t.co/bt9HttJIyn 5年以上前 replyretweetfavorite

moe_sugano わたしもモトカレさんのためなら犯罪すら手を染めたと思う。 少なくとも、あのころのわたしは本気でそう思ってた。 5年以上前 replyretweetfavorite