chaper4-8 効かないルーティーン

少しスランプになってきたかもしれない。しかし、恋愛にある程度の浮き沈みは避けられない。僕は新たな獲物を探しに、街に飛び出す。

 夜の8時過ぎに僕は帰宅すると、すぐにシャワーを浴びた。ちょうど良い気温で夜風が心地よかった。ワックスで髪を念入りに、無造作に乱れている自然な感じに整えた。過去にナンパが成功したときに着ていたゲンのいいTシャツを着て、黒のジャケットを羽織った。

 今日はソロ活動、つまりひとりでナンパだ。

 手持ちの女が友美ひとりになってしまい、その友美も僕から離れつつある。

 僕は、また市場いちばに新しい女を調達しに来たのだ。

 まずは、六本木の自宅の近くのカフェでナンパをはじめる。大きな共同テーブルにひとりで勉強しているAクラスの若い女を見つけた。教授に無理矢理に買わされた政治学の教科書を開いていて、すぐに彼女が女子大生だとわかった。僕はラテをひとつ買って、彼女のとなりに座った。

 いつものオープナーできっかけをつかむ。

「電話しないといけないんですけと、ちょっとだけカバンを見ていてもらえますか?」

 彼女は僕のほうを向いて、無言でうなずいた。

 僕は外に出て、3分ほど時間をつぶしてから、また元の席に戻ってきた。彼女が教科書から目を離して、ちょっと息抜きするタイミングで話しかけようと、チャンスをうかがっていた。状況観察に基づくオープナーだ。

 しばらくすると、彼女は教科書を読むのを止めて、スマホをいじくりはじめた。いまだ!

「政治学の勉強しているんですか?」

「……」

 彼女は僕を無視した。気まずい空気が流れる。そして、彼女は荷物をカバンの中に詰め込むと、不機嫌な表情を浮かべて席を立ち、そのまま去ってしまった。

 カフェの中の人たちが、みんな僕を見て、笑っているように思えた。

 今日は幸先の悪いスタートだ。


 次に、僕はナンパ師の間で「肉市場」と呼ばれている六本木のクラブに行くことにした。エントランスフィーが無料のこのクラブは、来ている女のルックスはいまいちだが、簡単にヤラせてくれる女が多いというので評判だった。僕は誰でもいいから、恋愛工学のルーティーンを浴びせて、手っ取り早くセックスしたかった。新鮮な肉を求めていたのだ。

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ぼくは愛を証明しようと思う。

藤沢数希

恋人に捨てられ、気になる女性には見向きもされず、非モテな人生をおくる主人公のわたなべ。ある日、恋愛工学と出会い、彼の人生は大きく動き出す……。 ファイナンス、経済学、エネルギー政策に関する著作をもち、リスク・マネジ...もっと読む

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aoneco22 恋愛なんてツマラナイものに何時迄もなんで縛られなきゃいけないのかを証明してください(苦) 2年以上前 replyretweetfavorite