chapter4-4 1ダース分の出会い

当たり前のようにルーティーンをこなし、女性を誘っていく。僕の中に蓄えられた巨大なエネルギーはまだまだ尽きそうにない。

 永沢さんが言っていた通り、人間の女もグッピーのメスといっしょだった。他の女とセックスすればするほど、身体にこびりついた他の女の匂いが、新しい女を引きつけた。ゴキブリホイホイみたいだ、と僕は思った。ゴキブリホイホイでは最初の一匹はなかなか捕れないのだが、一匹が捕まると、仲間の匂いに釣られて、他のゴキブリも次々と罠にかかる。

 恋愛工学を知れば知るほど、そして、実際にたくさんの女の行動を目の当たりにすればするほど、世間に広まっている恋愛に関する常識は、全て根本的に間違っていることを確信した。恋愛ドラマやJ-POPの歌詞、それに女の恋愛コラムニストなどがご親切にも、こうしたら女の子にモテますよ、と僕たちに教えてくれることの反対をするのが大体において正しかった。

 女は優しい男も、誠実な男も求めていない。実際のところ、イケメンや金持ちといったこともさほど重要な要素ではない。女は、単に他の女とセックスできている男が好きなのだ。

 人間のメスも、グッピーやメダカ、それにウズラやキジのメスたちといっしょなのだ。メスは、繁殖能力の高いオスの精子が欲しい。非モテのオスとセックスしたら、繁殖能力の乏しい子供が生まれて、ご先祖様から何百万年も続いてきた遺伝子のリレーがそこで止まって滅びてしまう。非モテとのセックスは、メスにとって遺伝的な破滅を意味する。繁殖能力の高いオスの子供なら、子供の繁殖能力も高くなる確率が高い。そうしたモテる子供を通して、メスは自分の遺伝子のコピーを増やすことができる。そして、オスの繁殖能力の一番の証明は、実際に他のメスと交尾できている、という実績に他ならないのだ。

 モテる男は、モテるゆえにもっとモテる。

 この残酷な動物界の法則により、人間界の恋愛市場もまた、グロテスクなほどに不平等が拡大している。

 4月は5人の女とセックスした。

 恋愛工学に基づき、正しい方法で恋愛をするようになってからの月間レコードだった。

 僕のスタティスティカル・アービトラージ戦略はフル稼働し、唸りを上げていた。

 勇太と行った有楽町の街コンでゲットした奈菜とは、その後も続いていた。彼女は、付き合っているわけではないが、会えばセックスする女友だちになっていた。セックスフレンド、略してセフレだ。

 もうひとり、同業者の人妻弁理士のセフレがいた。このふたりが、3月からの繰越で、“既存”の女たち。そして、“新規”の女が3人。ひとりは六本木のサルサスクールで出会ったバツイチのアラサーの久美子。スクールが終わったあとに、馴染みのバーに誘って、家に連れ込むというルーティーンが上手くキマった。

 残りのふたりは花見でナンパしたあゆみに早苗。あゆみは、永沢さんと千鳥ヶ淵に一緒に花見に行ったときにナンパした。週末にカフェでふたりで会い、そのままカラオケルーティーン→いつものイタリアンでワイン→家、という流れ。これで花見の味をしめた僕は、仕事帰りにひとりで中目黒に出撃。女友だちとふたりで来ていた早苗に、こんばんはオープナーを使ってひとりで話しかけ、勢いでLINEゲット。後日、同じイタリアンでワインを飲み、家に連れ込み、無事にゴールした。2対1を切り崩したのは初となった。

 5月も2か月連続のレコード更新となった。

 7人だ。前月からの既存の繰越は、人妻弁理士、あゆみ、奈菜の3人。新規は、なんと4人だ。これは月間新規レコードでもあった。毎週、違った女とセックスしたわけである。

 新規ひとり目は、街コンで出会ったOLの敦子。1回目のデートで、安いビストロでワインを一本空け、ルーティーン通りに家に誘い、難なく貫いた。街コンパートナーは勇太だった。

 亜樹は、よく行くクラブでしょっちゅう顔を合わせる奈月の友だちだった。僕は奈月を何とかしようとしていたら、たまたまいっしょに来ていた亜樹のほうとなぜか上手くいってしまった。日曜日にカフェでデートした後、翌週の仕事帰りにバーで再度会い、いつものルーティーン通りに連れ込めた。

 3人目は、スポーツジムで仲良くなっていたアラサーで自営業の友里子。たまにヒップホップエクササイズのレッスンをいっしょに受けていた女だ。帰りの時間がたまたま重なって、近くのバーに飲みに行くことになった。2軒目でいつもと同じ六本木のバーに誘い、そこからはルーティーン通り。簡単なドリルだ。

 そして、サプライズは、あの由佳だった。

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ぼくは愛を証明しようと思う。

藤沢数希

恋人に捨てられ、気になる女性には見向きもされず、非モテな人生をおくる主人公のわたなべ。ある日、恋愛工学と出会い、彼の人生は大きく動き出す……。 ファイナンス、経済学、エネルギー政策に関する著作をもち、リスク・マネジ...もっと読む

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youoria7 あとつくづく実感したのは「女は、単に他の女とセックスできている男が好きなのだ」という傾向。会話の中で相手のこの辺の性質を上手く引き出せたら、後腐れのない関係が作りやすいなと思った。 https://t.co/62P1p8gVIR 2ヶ月前 replyretweetfavorite

Fujisawa_bot 恋愛工学が解き明かす愛の物語 約2年前 replyretweetfavorite

Fujisawa_bot 恋愛工学が解き明かす愛の物語 約2年前 replyretweetfavorite

mgmgnet 不慮の事故で見ちゃったんだけど恋愛工学的()純愛小説「 2年以上前 replyretweetfavorite