文章力は、伝達力の基本」【第20回】今日から使える文章改善ルール

「日本人が日本語の文章を書くための文章力は、わざわざ身につけなくてもよい」は誤解です。子どものころに「文章を書く」という指導をきちんと受けてこなかった私たちに、入門書を得意とする作家・木暮太一さんが、文章力を身に付けるためにはどうすればよいかをお伝えします!


〔PHOTO〕Thinkstock

分かりやすい文章を書くには、3つの要素が必要です。その3つとは、「文法」「単語」「流れ」です。

話し言葉と書き言葉は違います。話し言葉で通じるからといって、同じように文章を書いても、正しく伝わるとは限りません。文章は、話し言葉よりも文法に気をつけて、正確なに書かなければいけないのです。

ただし、完璧に正確な日本語で書かなければいけないとは思いません。わたしたちは言語学者ではありませんので、あくまでも「伝えること」が目的です。なかには上げ足を取ったような「添削」をする人もいますが、「正しく伝わればいい」くらいに考えておけばよいでしょう。

そこで今回は、よくある間違いの中から最低限守らなければいけないルールを紹介します。

「フリ」と「ウケ」は正しく書く

「フリ」と「ウケ」が対応していない文章をよく見かけます。これが対応していないだけで、一気に文章が読みづらくなりますので、注意が必要です。

【ルール1】主語・目的語と述語を合わせる

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わたしは、この店のいいところは、静かで仕事に集中できる。
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わたしは、この店のいいところは、静かで仕事に集中できるところだと思っている。

お客様からのクレームには、丁寧な対応でなければいけない。
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お客様からのクレームには、丁寧に対応しなければいけない。
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【ルール2】「なぜなら」「というのは」は、「~だから」でうける

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学生のうちにできるだけ勉強しなければならない。なぜなら、社会人は仕事に大半の時間を割いている。
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学生のうちにできるだけ勉強しなければならない。なぜなら、社会人は仕事に大半の時間を割かなければいけないからだ。
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【ルール3】品詞をそろえる

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一番苦労したことは、来年の需要量がなかなか読めなかったからです。
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一番苦労したことは、来年の需要量がなかなか読めなかったことです。

彼が言いたかったのは、参加者全員が真剣に取り組む姿勢が重要だ。
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彼が言いたかったのは、参加者全員が真剣に取り組む姿勢が重要ということだ
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【ルール4】能動態・受動態も正しく表記

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我々が保有している特許技術は、B社が侵害し、弊社は損失を被った。
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我々が保有している特許技術は、B社に侵害され、弊社は損失を被った。
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「の」「は」「が」をやたらと使わない

「の」「は」「が」の使い方を甘く見てはいけません。何気なく「の」「は」「が」を使っている人が多いですが、書いている本人が気付かないうちに、文章が分かりづらくなっています。

たとえば、こういうことです。

・「の」を主格で使ってはいけません。
→×「私の持っていたカバンには、本が入っていました」

・「は」をテーマだしに使ってはいけません。
→×「リーマンショック以降の世界経済は、多くの投資家が損失を抱えたまま四苦八苦している」

・「が」を順接でつかってはいけません。
→×「現代では、パソコンを使えないと転職は難しいですが、やがて英語ができないと転職ができなくなる世の中がくるでしょう」

【ルール5】「の」を乱用しない

日本語の「の」には、いろいろな使い方があります。「私の机」「彼の主張」のように、「所有」をあらわす「の」の他に、次の例文のように「主格」の「の」があります。

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私の持っていたカバンには、彼が持っていたのと同じ本が入っていました。
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また、「モノ・こと」を表す「の」もあります。

しかし、「の」は所有格のイメージが強いため、主格として使っていても所有格として捉えられがちです。だから、「の」が「主格」で使われると、混乱を招き、文章を理解しづらくしてしまうのです。

この場合、「の」を「は」や「が」に置き換えるだけで、文章が非常にすっきりします。

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私が持っていたカバンには、彼が持っていた本と同じ本が入っていました。
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これは比較的単純な例です。このくらいの文章だったら、「の」のままでも理解できるでしょう。でも次の場合はどうでしょうか?

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彼の言ったのは、先日の打ち合わせの彼女のと同じです。
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さっと読んだだけでは、理解できませんよね。「の」を多用しているからです。この場合、次のように書きなおすべきです。

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彼が言ったことは、先日の打ち合わせで彼女が言ったことと同じです。
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わたしたちは「の」を見ると、どうしても「所有」をイメージしがちです。明らかに主語の一部であったとしても、すんなり意味を理解してもらえるわけではありません。「の」は便利な単語で、知らず知らずのうちに多用している可能性があります。文章では所有格以外の「の」は使わないという意識を徹底しましょう。

また、所有格の「の」を使うときでも、連発は避けるべきです。「の」が重なったときには、「の」を使わずに別の書き方で表現します。もしくは、文章を区切って、分けて表記します。

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これは、私の父の姉の家の玄関の隣に置いてある木彫りの熊の黒の置物です。
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これは、叔母の家の玄関先に置いてある、黒い木彫り熊の置物です。

彼はこの町の一番の高校の卒業生の柴田さんの息子さんだ。
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彼は、柴田さんの息子さんだ。柴田さんは、この町で一番の高校の卒業生だ。
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【ルール6】「は」を乱用しない

「は」は「私は男性です」「これは彼の持ち物です」など、主格を表わすことが多いです。つまり「主語」を表していることが多いのです。同時に「○○は」とみると「主語」として認識されやすいのです。ですが、先ほどの文章の「は」は違います。

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リーマンショック以降の世界経済は、今でも多くの投資家が損失を抱えたまま四苦八苦している。
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「リーマンショック以降の世界経済」は、この文章の主語ではありません。これは「これから●●についての話をします」というつもりで書いている「テーマ出し」の「は」です。

ですが、これが「テーマ出し」であることは、一文を全部読んでみなければ分かりません。読み手は、てっきり主語だと勘違いして「リーマンショック以降の世界が、どうしたの?」とイメージしながら読み進めます。その結果、文章の主述の関係がつかみづらくなってしまうのです。

このようなときには、「は」を使わず、文章を分けて、最初の文章でテーマ出しをします。

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リーマンショック以降の世界経済について。今でも多くの投資家が損失を抱えたまま四苦八苦している。
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こうすれば、内容が伝わりやすく、また文章もすっきりします。

【ルール7】「が」を乱用しない

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現代では、パソコンを使えないと転職は難しいですが、やがて英語ができないと転職ができなくなる世の中がくるでしょう。
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この文章に使われている「が」は、接続助詞です。

ふつう、文章に「が」が出てくると、逆説を思い浮かべますよね。「私の兄弟は全員男だが、いとこは全員女だ」「兄は英語が得意だが、弟は苦手だ」というように、前半と後半で逆の内容の文章をつなぐときに「が」が使われます。

しかし、「そして」や「また」と同じような用法(順接)で「が」が使われることがあります。順接の「が」は、頻繁に使われます。しかし、「分かりやすい表現で書く」という観点からすれば、これはなるべく使うべきではありません。一文の前後が逆説でつながれているのか順接でつながれているのかが分からなくなり、読み手が混乱してしまうからです。

この場合、「が」を使わずに、前半と後半で文章を区切った方が、分かりやすい表現になります。

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現代では、パソコンを使えないと転職は難しいです。そして、やがて英語ができないと転職ができなくなる世の中がくるでしょう。
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木暮太一の「経済の仕組み」

木暮太一

10万部超のベストセラー『今まで一番やさしい経済の教科書』などのビジネス書で知られる著者が、なんとなく分かったつもりになっていた「経済の仕組み」を懇切丁寧に解説します。ビジネスパーソンの基礎力を高めたいなら必読です。

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azuma316 うおお続き読みたい 4年以上前 replyretweetfavorite