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伝達内容を誤解されることも問題ですが、感情を誤解されることもビジネスでは避けたいものです。「やる気がない!」と誤解されたり、「怒っているの??」と思われてしまったり---。たとえ内容が正しく伝わったとしても、こちらの姿勢や感情を誤解されてしまうと、その後の関係がギクシャクすることもあります。
今回はそれを避けるためのポイントを説明していきます。
書かれた文章は、話し言葉よりも感情が低く出る
まず理解していただきたいは、同じ日本語でも、会話より「書かれた文章」の方が「テンションが低く」「冷たく」感じるということです。
何気なく、普段の会話と同じ日本語で文書やメールを書くと、「やる気がないの?」「なんか怒ってる?」と思われてしまうのです。
1)社内で会った時に口頭で
「あ、○○さん。この前のプロジェクトの件、了解しました。ご指示通りやっておけばいいんですよね~!」
2)メールで
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○○さん
先日のプロジェクトの件、了解しました。
ご指示通りやっておけばいいんですよね。
木暮
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いかがでしょうか? 随分と印象が変わりますね。文章にすると、表情や言葉の抑揚が伝わらず、感情が表現できないので、「テンションが低く」「冷たく」感じるのです。場合によっては「仕方なくやっている」というように勘違いされてしまいます。
この誤解を防ぐのに有効なのは、「文章では、やや過剰に感情を表現する」というテクニックです。たとえば、感情が伝わるような言葉を追加したり、びっくりマーク「!」を使ったりするのです。
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○○さん
お疲れ様です! この前はありがとうございました。 ←感情を伝えている
先日のプロジェクトの件、了解しました
ご指示通りやっておけばいいんですよね! ←「!」で書き手の気持ちを表現
木暮
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無駄な文は書くべきではない、というのが文章を書く上での鉄則です。しかし、書き手の感情を伝えるためであれば、多少は「無意味な要素」を入れても構いません。
ポジティブな内容は過剰に、ネガティブな内容はできるだけ抑える
特にメールで伝える時に気をつけるべきことは、自分の感情を適正に相手に伝えることです。メールの文章もやはり「冷たい」と捉えられがちです。そのため、ポジティブな感情を伝えたいのであれば、自分で「過剰」と思うくらいに表現する必要があります。
「喜び」や「満足」を伝えたいとき、口頭と同じ表現をそのままメールに書いたのでは、感情は伝わりません。その結果、相手は「特に喜んでくれてないんだな」と勘違いをしてしまいます。
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(感情が伝わらない文章)
先日の会議で、私のプレゼンをサポートしていただき、ありがとうございました。
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(改善例)
先日の会議で、私のプレゼンをサポートしていただき、本当にありがとうございました! 緊張していたので、とても助かりました。また勉強させてください!
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なんでもいいから大げさに書けということではありません。思っていないことを書く必要はありません。ですが、口頭でお礼を伝えるときに、表情や声の抑揚から伝えられる感情が文章では伝えられません。それを文字にして表現しなければいけないということなのです。
ネガティブな内容を書く場合
反対に、相手に反省を促したり、こちらが納得していないことを伝えるなど、ネガティブな感情を伝えたい場合は、そのままメールに書いてしまうと、表現が強くなりすぎる傾向があります。
そうすると相手は「ひどく怒らせてしまった」「こんなに怒られた」と感じてしまいます。そして変な気を使わせてしまったり、「怒っているから連絡しづらいなぁ」と勘違いさせてしまったりします。いずれにしても、みなさんは誤解され、業務に支障をきたすケースも出てきます。
「ネガティブ感情」を低く抑えて見せるためには、
・あえて話し言葉で書く
・相手を理解する言葉を入れる
・前向きな言葉を入れる
などが有効です。
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(過剰に冷たく見えてしまう例)
○○様
なぜあのような問題が起きたのか理解できません。
当社の損失は大きく、またお客様にも迷惑をかけてしまっています。
今後の再発防止策を至急検討してください。
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(改善例)
○○様
どうしてあのような問題が起きてしまったのか、まだよく分かっていません。
いろいろ大変なことがあったのだと思います。でも当社の損失は大きいです。またお客様にもご迷惑をかけてしまっています。
ただ、大事なのは「これから」です。今後の再発防止策を、急ぎ検討してくださいね!
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わたしは、メールでの感情表現、気持ちの伝え方を、サイバーエージェントの藤田社長から学びました。2004年~2007年まで、事業責任者としてサイバーエージェント子会社の経営に携わっていたときのことです。藤田社長に直接相談する機会も多かったのですが、だいたいはメールでのやり取りでした。
今ではほとんどの業務報告や連絡・相談がメールで行われています。そのメールで受け手にどのような印象を与えるかは、マネージメントに大きな影響を及ぼしていると思うのです。
藤田社長からのメールは、短く、あっさりしていました。しかし、それでも「気持ち」が伝わってくる文面でした。
好業績を報告すれば「よかったね」「おめでとう」ではなく、「よかったね!」「おめでとう!!!」と返信がありました。反対に、何かを指導するときにも、メールの受け手が前向きになれるような配慮を欠かしません。
一度、ある販促計画について相談をすると、次のような返信がありました。
「う——ん、ちょっと考えなおして!」
このように「くだけた表現」にしてもらったため、「社長は怒っているわけではないな」と確認でき、前向きにプランを再検討・再提出することができました。
もしもこの時に「全然ダメ。考えなおして。」と書かれていたら、萎縮してしまい「次もまた怒られるかも」と後ろ向きな気持ちで仕事をしていたかもしれません。
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