第85回】ドイツ人の比類なきカーニバル精神と、EU各国を覆うテロの不安

イツのシュトゥットガルトに在中の川口マーン惠美さんが、EUから見た日本や世界をテーマにお届けするコラムです。


デュッセルドルフの月曜日のパレード 〔PHOTO〕gettyimages

限りなくみっともなくて、バカバカしいドイツのカーニバル

カーニバルは、リオデジャネイロやベネチアばかりではない。ドイツでも一年に一回、最高に盛り上がる。特に、ドュッセルドルフ、ケルン、マインツなどは、2月、あるいは3月の1週間、まさにカーニバル一色になる。ドイツ人が真面目な国民だと信じている人は、この姿を見たらおそらく腰が抜けるほど驚くに違いない。ドイツ人は、この1週間のために生きているのではないかと思うほどの熱しようだ。
ただ、ドイツのカーニバルは、リオのようにセクシーでもなく、ベネチアのように優雅でもない。もう、限りなくみっともなくて、バカバカしいのだ(←私の独断と偏見)。

カーニバルは何ヵ月も掛けて周到に準備される。正式な開始は11月11日で、この日からドイツ人の比類なきカーニバル精神は、クリスマスの厳かな時期だけは遠慮するものの、あたかも子宮の中で胎児が肥え太っていくように膨張し続ける。カーニバルの中核を担っているのは、数多くの愛好会やら同好会だが、その他いろいろなスポーツクラブ、あるいは趣味の会なども、祭りが近づくにつれて激しくのめり込んでいく。まあ、よく言うなら、伝統の継承への尽力である。

カーニバルに関しては、ドイツ人の趣味は真二つに分かれる。このバカ騒ぎが死ぬほど好きな人と、完全に鼻白む人で、私は後者だ。しかし、カーニバルが近づくにつれ、無視したくてもできないほど、巷にはお祭り騒ぎの雰囲気が立ち込めてくる。


シュトゥットガルトの火曜日 〔PHOTO〕gettyimages

カーニバルの最高潮の日にはパレードを開催

カーニバルは、まず「女の木曜日」から始まる。どの木曜日かということは、その年のイースター(3月から4月にかけてのいつか)の日付からの引き算で決まる。ただ、イースターは年ごとに移動する祝日なので、カーニバルの時期も毎年変わる。いずれにしても、たいていは2月、極寒の季節である。今年は2月12日の木曜日に始まった。

「女の木曜日」というのは、女性が権力を振るえる日で、多くの市役所や町役場に女性のグループが乱入する。それを迎える市長や村長が、すでにカーニバル状態で、派手で変てこな帽子などを被っていたりする。さらに驚くことなかれ、この日、女性はハサミを持っていて、男性の着けているネクタイを、手あたりしだいジョキジョキと切っても良い。

昔、通訳をしていた時、カーニバルの翌週、シュトゥットガルト近郊のある会社に行ったら、女性社員の席の窓に、ぶんどったネクタイの残骸がたくさん、洗濯物のように吊り下げられていた。社長いわく、「この日は毎年、古いネクタイを締めていきます」。ご苦労様な話だ。

ただし、前述のように、カーニバルを楽しめるかどうかは、各人の間でかなりの温度差があるので、いくら楽しくても、まるで知らない人のネクタイを狙うのはやめた方がいい。

カーニバルは、仮装のお祭りでもある。特に、ドュッセルドルフとかケルンはカーニバルのメッカなので、仮装は徹底しており、老いも若きも軒並み、信じられないような恰好で日常生活を送っている。変な帽子を被っていたり、尻尾を付けていたり、顔に絵を描いていたりという人たちが、普通に街を歩き、電車に乗っているのだ。また、デパートに行っても、レストランに行っても、従業員は何らかのシンボルやら飾りをつけている。初めて見たときは大変びっくりした。今では驚かないが、とはいえ、慣れたわけでもない。

カーニバルのハイライトは、地域によって違う。ケルンは日曜日、ドュッセルドルフは月曜日、南ドイツでは火曜日が最高潮。月曜や火曜は祝日でもないのに、お祭りのせいで店は休み、あるいは昼まで。シュトゥットガルトは火曜日がハイライトなので、その前の週から、銀行やお店に「火曜日の午後は閉店」と張り紙が出る。カーニバルはただのお祭りのわりには、各地で大手を振っている。

この最高潮の日に何が行われるかというと、大々的なパレードだ。先導はパトカーと騎馬警官。そこに続くのが、それぞれ工夫を凝らした山車が数十台。それに乗った人、また、行進する人たちが、ドンドコ太鼓をたたき、陽気な音楽を流しつつ、踊ったり、叫んだりしながら観客に向かってキャンディーを雨あられと投げ続ける。

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シュトゥットガルト通信

川口マーン惠美

シュトゥットガルト在住の筆者が、ドイツ、EUから見た日本、世界をテーマにお送りします。

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