私が溜め込んだタンポンをいかに売買しているのか、その話をしている時に母は直角に回転した。そのとたん、母とのあいだにだぁんと厚さ50センチのガラスの壁がふってきて、私の声はもう、彼女には届かない。
家族ってなんだろう。
私にとってそれは長い間、巨大な謎だった。
今からその謎を解いた話をする。このことは思い出すだけで、両肩がダルくなる。けれど、私はこの話も、しなければいけないように思う。
ある日、私は母に成績のことでなじられていた。高3の夏休みだった。母は私が受験の模試でB判定だったことにハラを立てていた。あんたに教育費いくらかかってると思ってるの、お母さんどれだけあんた育てるのに苦労してると思ってるの。母の毎日繰り返される洪水のような罵倒に私はそろそろ耐えられなくなっていた。
「あのさぁ」
私は泣きながら母に言った。
「お母さんさあ、そうやって学費がどうのって私のこといつもいつも責めるけど、私そうやって小遣いもらうたんびにお母さんに怒られるのがいやで、タンポン売ってんだけど、知らないおっさんに。気づいてるよね?」
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