それでも僕は、外科医をやめない

リアルすぎる救急外来のお話〜活性炭で患者を救え〜

大病院に勤務している医者にとって、深夜勤務は忍耐の連続です。救急外来で運ばれてくる患者さんは、夜の方がやっぱりヘビーなようです。事件、事故……etc, あらゆる事態に対応するべく奮闘する、気の抜けない深夜勤務の医者の日常を振り返ります。今回の雨月先生は、普段は見れない病院の夜の様子を赤裸裸に語ります。

こんにちは、外科医の雨月メッツェンバウム次郎です。

寒い日と暖かい日が交互にやってきて、まさに三寒四温を肌で感じるこのごろ。

さて、今回は救急外来で働いた時のお話を致しましょう。

日中に外科医や内科医をやっていても、夜間は救急外来で救急医として働く、救急車の患者さんをみて治療を開始する。これは日本全国で行われていることです。「救急」だけの専門のドクターはそれほど多くなく、普段は他の専門があって働いている医者が夜はなんでも救急の患者さんを診る。これは普通のことなんですよ。

「救急外来」。それは、主に夜間や土日に開かれる、緊急の処置が必要な患者さんのための外来です。

最近はずいぶん医療ドラマがはやっていますが、ここcakesではドラマには決してならない、リアルな救急の世界のお話をしましょう。

昼間病院に来る患者さんと比べると、交通事故やけが人、酔っぱらいさんがたくさん来ます。
そして何と言っても多いのが、「自殺未遂」の患者さん。実に多種多様の「自殺未遂」の患者さんが来ます。

一番多いのが、「OD」と言われる患者さんです。

およそ救急外来で働く医者で、「OD」の患者さんを診たことがない医者はいないでしょう。これは、クスリを100錠とか200錠とか大量(=Over dose)に飲んで自殺を図った患者さんのことです。日本語では「過量内服による自殺企図者」です。

たいていは夜10時から12時くらいのあいだに、看護婦さんから「せんせーオーディーきまーす」と、なんとも緊張感のない電話が来て、運ばれて来るのです。しょっちゅう来る上に、命に関わることはまずないので、看護婦さんの緊張感もなくなるのでしょう。治療もだいたいいつも同じです。

救急外来でよくやるのが、「胃洗浄」という治療。文字通り胃をじゃぶじゃぶ洗うのです。鼻から鉛筆より太いくらいの太さの、長いチューブを入れ、鼻から50cmの胃まで入れます。そのチューブから、真っ黒な「活性炭」の粉を溶かした水をたくさん入れ、まるで脱臭するように少しでもクスリの成分を吸着させるんです。それによって、クスリが体内に吸収されることを防ぐのです。この活性炭の漆黒の液体が白衣に着くともう絶対にとれないので、ヒヤヒヤものです。

胃洗浄をされている間、患者さんは基本的には痛みなどはありません。だいたい睡眠剤を飲んでいるので、ぼんやりとした中、淡々と漆黒の液体が注入されては抜かれます。

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それでも僕は、外科医をやめない

雨月メッツェンバウム次郎

高学歴エリート集団だと思われがちな外科医の世界は、実は、毎日人を切り刻んでる特殊な世界です。現役医師が語る外科医の世界は、とっても不思議な世界。毎日、さまざまな患者さんと接し、手術をするなかで感じたことを、ありのままに語ります。not...もっと読む

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コメント

Barbara_Mass 文章から伝わる臨場感!ハラハラした!そして、かっこいい! 2年弱前 replyretweetfavorite

i_n_m_16 ぞっとするくらいの描写あり。それくらいでないと、命は守れないとの判断だろう 4年弱前 replyretweetfavorite

s_1wk 誰にも迷惑をかけない自殺方法はないんだなと> 4年弱前 replyretweetfavorite

su_3 今回は非常に重い。頭が下がる  4年弱前 replyretweetfavorite