——それでは、第2部に移りたいと思います。森さんが退社された翌年に、背表紙の青いハヤカワ文庫SF、いわゆる「青背」が始まりました。それまでのハヤカワ文庫SFは、本格SF路線の「銀背」、ハヤカワ・SF・シリーズに対して、娯楽SF路線をとっていたわけですが、銀背が出なくなったあと、その後継として青背が誕生したわけです。
込山 森さんがお辞めになった、次の年ぐらいに終わりになったんでしたっけね。
——店頭にはずっとありましたけど、新刊は1974年11月のハリイ・ハリスン『殺意の惑星』が最後ですね。だから、青背は、背表紙の白い従来のハヤカワ文庫SF(白背)と区別するために背の色を変えて、イラストも口絵も入れないことにした。白背は白背で口絵・挿絵入りで娯楽路線を継続するけれど、ハヤカワ・SF・シリーズの文庫化とか、本格SF的なものは青背で出すというふうに、2つの系統が並立することになったんですね。
その青背の最初の1冊が、カート・ヴォネガット・ジュニアの『プレイヤー・ピアノ』で、番号は172番、1975年10月の刊行です。ちょうどこの時期は、同時代の本格SFの翻訳刊行が滞り気味で、海外SFマニアの間では、翻訳SF暗黒時代みたいに言われていました。その後、1978年に海外SFノヴェルズとサンリオSF文庫が相次いで創刊されて、状況が一変するわけですが。
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