追い込まれた若者は、その後どうなったのか

オレオレ詐欺など老人を狙った詐欺、通称「老人喰い」。その被害は増えつづけ、2014年1~11月では498億7343万円にのぼっています。なぜ老人詐欺は増えつづけるのか。その担い手は誰なのか。cakesでは2月に刊行された鈴木大介著『老人喰い』(ちくま新書)の中から抜粋し、毎週水曜に連載します。犯罪の深層をえぐり、社会の病を撃つ、迫真のルポをご覧ください。

浪費される人材と才能

 どうだろうか。これが老人喰いの頂点、特殊詐欺犯罪の組織、現場で働く若者たちの心情の、現状と今後だ。

 「なんという人材と才能の消耗・浪費なのだろうか」

 これが彼らを取材しての、最終的な感想である。

 少なくとも、詐欺の現場プレイヤーとして登用される若者たちは、彼らが活躍しやすい環境を与え、彼らにフィットする鍛錬を与えれば、様々な業種で成績を残せる人材。だが、詐欺の店舗は彼らを効率よく成長させるが、一方でとてつもない勢いで消耗させる。多くの平プレイヤーとその後を見てきた前出の神部君は、「プレイヤーの半数以上は挫折する」と言う。

  「俺自身が危うい時期がありましたけど、まずSの店舗は短期決戦型が多いということですね。2カ月集中して働いて、次に声がかかるまでに数カ月単位で休みってことがある。この間に、かなりの奴が腐るんです。

 番頭や店長からどれだけキツく言われてても、クスリに手ぇ出したり、派手に遊んでるとこをヤクザに目ぇつけられて潰されたり、カジノに入り浸ってバカラで1晩何百万円擦っちゃったり。俺が番頭に昇格した条件のひとつに、貯金してたことがありましたけど、ほとんどのプレイヤーは稼いだ金の半分のこってたらいい方ですね。こういう奴は、休んでる間にナマクラになって、いざ新規店舗配属ってなってもスイッチ入るのに時間がかかる。最初の店舗が一番稼げて、どんどん売り上げ落としていく奴も少なくない。プレイヤーは単に経験年数じゃないってことですね」

 一方で、いくら老成しているように見えても、プレイヤーの多くは20代の若者。純粋なら純粋なほど、プレイヤーを上がって一般人になったあとに潰れるという。

「結局、S稼業以上に、努力が報われる仕事がないってことです。そもそも『労務単価』が違いますから、まず一般職で勤め人は、しばらくの間はできないですよ。下らなくて。それ以上に、これは俺自身がそうですが、Sの店舗の人間と他の会社の人間と比べると、殴りたくなってきちゃうんですよ、モチベーション低すぎて。だから、ほとんどの奴は勤め人じゃない道を選ぶわけですが、これが見事に失敗します。例えば飲食店の開業に出資するとかでは、明らかにSのプレイヤーOBを狙って悪徳開業コンサルする奴がいて、キャバでも風俗でも店出して1年持つってことはなくて、数百・数千万単位の資本金溶かして潰れるのが定番パターンなんです」

悲しいほどに落ちぶれた「詐欺OB」

 多くのプレイヤーがOBとなった後に「またプレイヤーに戻りたい」とぼやくようになるが、稼いだ金が底をつくまでは腰も上がらない。というわけで、神部君が見たプレイヤーOBには、アル中、ヤク中、博打狂、ネットゲーム廃人と、惨憺たるその後を送る者たちがいるのだという。

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老人喰い—高齢者を狙う詐欺の正体

鈴木大介

オレオレ詐欺など老人を狙った詐欺、通称「老人喰い」。その被害は増えつづけ、2014年1~11月では498億7343万円にのぼっています。なぜ老人詐欺は増えつづけるのか。その担い手は誰なのか。cakesでは2月に刊行された鈴木大介著『老...もっと読む

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ino_net 優秀な若者を短期間で消耗・堕落させ、やがて裏社会へと回収させていくサイクル。この社会的損失も、止めどない詐欺犯罪被害と併せて問題と。 3年以上前 replyretweetfavorite

chikumashobo 鈴木大介/老人喰い――高齢者を狙う詐欺の正体 https://t.co/eiKltPXhoq 3年以上前 replyretweetfavorite