殺人、強盗、強姦……詐欺は本当に犯罪なのか

オレオレ詐欺など老人を狙った詐欺、通称「老人喰い」。その被害は増えつづけ、2014年1~11月では498億7343万円にのぼっています。なぜ老人詐欺は増えつづけるのか。その担い手は誰なのか。cakesでは2月に刊行された鈴木大介著『老人喰い』(ちくま新書)の中から抜粋し、毎週水曜に連載します。犯罪の深層をえぐり、社会の病を撃つ、迫真のルポをご覧ください。

ギラギラした威圧感をもつ男

 逃げ出したくなるような沈黙の支配する事務所の中に、ひとりの男が勢いよく入ってきた。蹴り飛ばすようにドアを開けた男は、30代前半だろうか、その丸顔は日に焼けて黒く光り、一目見て高級そうなスーツの胸板ははち切れんばかりに厚い。

 振り込め詐欺店舗のベテラン店長にして、新副番頭、毒川。番頭の加藤と密談をしていた時とは別人のように、丸顔の中の大きな目に覇気をギラギラさせ、触れれば爆発しかねない威圧感をもっての登場だった。

 「お前らが研修の生き残りか!俺は詐欺の箱回してる店長の毒川だ!」

 唾を飛ばす勢いの毒川に5人の参加者がたじろぐのを見るや否や、それまでの小柴の罵声とは比較にならぬ大音声の怒声が響いた。

 「おらあ!なに座ってんだ!」

 毎朝晩の軍隊式とも言える発声練習やシゴキを乗り越えてきた5人である。即座に椅子を蹴るような勢いで立ち上がった。毒川の陽に焼けた丸顔の額には血管が浮かび上がり、いまにも人を殺しそうな迫力だ。が、その次に毒川の発した言葉に、一同の腰は抜けたようになった。

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老人喰い—高齢者を狙う詐欺の正体

鈴木大介

オレオレ詐欺など老人を狙った詐欺、通称「老人喰い」。その被害は増えつづけ、2014年1~11月では498億7343万円にのぼっています。なぜ老人詐欺は増えつづけるのか。その担い手は誰なのか。cakesでは2月に刊行された鈴木大介著『老...もっと読む

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hazkkoi 合法的な「詐欺」が罷り通る資本主義社会が存続し続ける以上、オレオレ詐欺はなくならない。 5年弱前 replyretweetfavorite

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