どのように詐欺のプレイヤーは作られるのか

オレオレ詐欺など老人を狙った詐欺、通称「老人喰い」。その被害は増えつづけ、2014年1~11月では498億7343万円にのぼっています。なぜ老人詐欺は増えつづけるのか。その担い手は誰なのか。cakesでは2月に刊行された鈴木大介著『老人喰い』(ちくま新書)の中から抜粋し、毎週水曜に連載します。犯罪の深層をえぐり、社会の病を撃つ、迫真のルポをご覧ください。

平手打ちの飛ぶ研修

201×年某月、東京都心から電車で40分ほどの雑居ビルにあるテナントが契約された。

築40年ほどの鉄筋コンクリート造ビルはテナントも空きがちで廃墟のよう。入り口の集合ポストにはガムテープで投函口を塞がれたものもあるし、屋上かベランダの防水処理ができていないのか、1階エントランスには壁から染み出た水が小さな水たまりを作っている。

その一室、朝7時35分。多くのサラリーマンがテレビのニュースを見ながら朝食を取っているだろう時間だが、ガランとしたオフィスにはミニテーブル付きのパイプ椅子がズラリと並べられ、決して広くはないテーブルの間には思い思いの私服に身を包んだ20余名の男たちが緊張した面持ちで立っていた。

ミニテーブルの上にはA4のコピー用紙にミッシリと印刷された細かい文字の名簿と、フローチャート式の営業書類が1部、そして携帯電話が1本ずつ。立ち尽くす男たちは、目の前で繰り広げられている異様な光景に目を見張っていた。

「面接ん時に言われたはずだけどな! 研修初日から遅刻っつぅのは、舐めてんだなテメェらは! 舐めてんだろ!」

狭い事務所の窓際に置かれたホワイトボードの前、整列させられた4人の若い男たちの横っ面に、間髪入れずに容赦ない平手打ちが飛んだ。

バッチーン!およそビンタの音とは思えない、掌の芯を得た平手打ちの激しい打撃音に、テーブルの間で直立不動の男たちの表情にも緊張が走る。

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老人喰い—高齢者を狙う詐欺の正体

鈴木大介

オレオレ詐欺など老人を狙った詐欺、通称「老人喰い」。その被害は増えつづけ、2014年1~11月では498億7343万円にのぼっています。なぜ老人詐欺は増えつづけるのか。その担い手は誰なのか。cakesでは2月に刊行された鈴木大介著『老...もっと読む

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KeKKero 『「お前らいま、内心ブラック企業に来ちまった~とか思ってんだろ? だろうな。悪いけど、それ大当たりだ」 』ドラマか!(゚∀゚)(いやマジで 2年以上前 replyretweetfavorite

chikumashobo 平均預金額2000万円――老人の金を奪うのはだれだ!? 2年以上前 replyretweetfavorite