光浦靖子【前編】お悩み相談は最高のクイズ、みなさんもいかが?

推理小説仕込みのプロファイリングで相談者を丸裸にし、思いがけない暴走展開で悩みを笑いに変えてしまう光浦靖子さんのTV Bros.の人気連載が、『お前より私のほうが繊細だぞ!』として文庫本になりました。連載を通じてお悩み相談の達人となった光浦さん。実は子供の頃から悩み多き人生を送ってきたそうです。そんな光浦さんが提案するお悩み解消方法、「お笑いをルールに」とは?


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 実在する女の子は、アナタの想像と違うからおもしろいんじゃん。想像通りの答えでいいの? 想像通りの行動でいいの? ああ、つまんない。アナタはこの先ずっと、今のアナタと同じ。なんの変化も成長もしないですよ。人と付き合うって、自分の枠を壊してもらうことじゃない? 想定外をどれだけ提供してもらうかじゃない? そして、堂珍と川畑のようにケミストリーするんじゃないの? まずは受け入れる! まずは受け入れる!

 ………さて、ここで問題です。何行目から、昨日私がされた説教にスライドしていったでしょうか?

『お前より私のほうが繊細だぞ!』P85~86ページより

お悩み相談は最高のクイズ

— 『お前より私のほうが繊細だぞ!』、ユニークなお悩みもさることながら、思いがけない解答が続出で、ついつい笑ってしまいました。

光浦 私、怖くて読み返してないんですよ。

— え、怖いというのは?

光浦 いや、恥ずかしくて。自分が書いた文章はめったに読まないんです。

— お悩み回答をしながら、相談者が浮かび上がってくるのが、スリリングでおもしろいです。

光浦 いっとき、推理小説をすごく読んでた時期があるんですよ。だからエセプロファイラーみたいな気分。お悩みの語尾だけ引っ張って「お前はこういう人間だ」とか、「自己防衛の文章をここに一行入れるってことは、こういう傾向があるに違いない」とか、勝手にプロファイリングしてるんです。

— 短いお悩みの文面から、よくまあこんなにというぐらい相談者の人生を暴きだしますよね、実際そうなのかは別にして……。

光浦 もう本当、偏見と先入観でお答えしてますね。これは最初から、真剣なお悩み相談というよりは、もうちょっと冗談が通じる人たちの遊びみたいな前提でやってるんでね(笑)。でも頭の体操になりますよ。

— わずかなヒントから答えを引っ張ってくる?

光浦 そうそう。これみんなもやればいいと思う。……ああ、でも手の内をバラしちゃいけないか!

— よければその一端だけでも聞かせてください(笑)。

光浦 人の悩みを考えるって、クイズとしてはとってもおもしろいですよ。私は文系なんで、暗記も嫌いだし数字も嫌い。言葉遊びのクイズも意外と数学的だったりして疲れる。そんな中で感情クイズともいえるのが、このお悩み相談だと思うんですよ。
「この人はどういう感情だったでしょーうか?」とか「この人はどんなことで傷ついたんでしょうか?」っていうクイズ。「上司のこういうポロッと言った一言に傷ついたと思う!」って勝手に想像してみる。

— ちなみに、自分なりに名解答と思うのは?

光浦 名解答じゃないけど自分で笑っちゃったのは、すごいヒドいことを書き連ねて質問者を否定しといて最後に「娼婦の靖子のお喋りがすぎたようです」で締めた回かなあ。

<(中略、相談者を散々なじった後)
 私は細かそうで「おチンチンの形が変だ!」とか言いそうなんですって。言いませんよー。比べるほどおチンチン見てませんもの! だったら見せてよ。平均値が出せるぐらい、アナタのおティンを見せてよ〜!
 どんな女も二面性があるのです。今日は、娼婦の靖子のお喋りが過ぎたようです。
(P133「バツイチを告白するタイミング」より)

— はいはいはい。お腹の皮がよじれました。

光浦 なんて逃げ方だよ、よくこんなの公の場で書いてるなと思って(笑)。

暇すぎて、他人のことで悩んでしまう

— テレビやライブなどで光浦さんが「最近こんなことに気付いたんだけど」とぽろっと話されることが、真理をついていてハッとさせられることがあります。光浦さん自身、常になにかを突き詰めて考えるクセがあるんでしょうか?

光浦 ああ、それはあります。あのね、暇なんです。

— いやいや(笑)。

光浦 本当に! なんでみんなはそんなに時間がないんだろうって不思議なくらい。時間があるのにやることがないもんで、小さい小さい悩みが溜まっていくんですわ。
 おかげさんで「食う/食わない」とか「死ぬ/死なない」っていう大きな悩みがないもんで、小さなことにばかり引っかかって、道歩いてたり、おトイレにいたりするときにずっと考えてる。そんなときに「あ、人生が解明できた!」とか、よく閃いてますよ。

— 人生を解明ですか!

光浦 最近よく解明してますね。「すべてが見えた!」って瞬間がある。たぶん、頭がおかしくなってきてるんです。「なぜ人がこの世に生まれたかが今わかった!」とか、「そうか、だから空気があるんだ!」とか、とてつもなく大きなことを……。

— そんなに壮大な謎を!?

光浦 でもそれは言葉にもできないし、すぐ忘れちゃうんですけど。以前シティボーイズの斉木しげるさんが、なんで宇宙ができたかっていう、いまこの世にいる誰もわかってないことが解明できたんだって。周りの人は笑ってるし、斉木さんに聞いても「話すと3日くらいかかるけど聞く?」って言うし(笑)。なんておもしろいおじさんだって思ってたけど、歳とるとそういう感じになってくるのかな?

— あははは。せっかく解明した内容は忘れてしまうんですね。もったいないです。

光浦 一回人に説明したらすごいバカにされたので、怖くて言えなくなっちゃった。「そんなの何の発見でもないし、当たり前のことを当たり前に描写してるだけじゃん」って言われて。確かにそうなんだけど、私にはあの時、すべてがわかったような気がしたんだよ……って。

— 普段からずっとそんな調子ですか?

光浦 商店街行くと、悩んじゃって歩いてらんないんですよ。さびれた衣料品店とか見ると「どうやったら売れるんだろう」とか「どうにかしなければ」とか思っちゃう、何様だ! って感じの責任感の強い子供だったもんで。「こういうふうにしたらこの家庭はもっと円滑に回るのに」とか、子供の頃からそういうことを常に考えてたんですよね。

— 他人のことを勝手に悩んでしまうわけですね。

光浦 そうそう。だからいまだに、アクション系の映画とかも好きじゃないんですよ。災難が降りかかってきて、アクションでがんばって解決する。ああいうのは胃が痛くて痛くて、イヤなんですよね。

— 災難がその人に降りかかっている状態が嫌?

光浦 嫌なんですよ。『小公女セーラ』とかも苦手。でもそんなことはみんなあることでしょう? 商店街みたら「どうしたらいいんだろう?」ってみんな悩むでしょう?

— わかる気もしますが、気にしない人も多いとは思います。

光浦 でもそれはみんな忙しいから。生きていくうえでやることがいっぱいあるから。

— 暇といえば、光浦さんは手芸もやってらっしゃいますが、あれは時間がかかりますよね。その時は?

光浦 あ、手芸やってるときは無心に近いなあ。

— これまでずっと考えてきたから、手芸で心を休めているんですかね。

光浦 バランスをとってるのかもしれないですね。

お笑いをすべてのルールに

— なんかわりと切実なものから、どうでもいいものまでいろんな悩みがありますけど、悩みって、結局何なんでしょうね。

光浦 うーん……。やっぱり欲じゃないですか。手に入れたいけど手に入れられないから、悩みが生まれる。

— ただ、この本を読んでいると笑ってしまう。悩みを突き放して客観視してみると、ずいぶん楽になるのかもしれないですね。

光浦 そう。お笑いの世界がそうだから。私、お笑いがすべてのルールになれば、いじめはこの世からなくなるかもって思うことがある。

— それはどんな?

光浦 お笑いってわかりやすく、笑いをとった人がいちばん偉くていちばんカッコいい、みんなが憧れる人になる。ブサイクに生まれたらなんて羨ましいんだろうって思われる特殊な世界なのよ。失敗した不幸な話も笑いをとれる。そうすると「いいなー、実家が貧乏で」なんて、コンプレックスが手柄に変わっていく。

— 確かに! ただ、それはおもしろく話せるという芸人さんの腕によるところもあるのでは?

光浦 でも私がいたのは小学校のときからずっと、笑いをとった人が勝ちっていうグループだったの。高校生の時なんかも、ブスな女ばっかり集まって不幸なことを笑いながらしゃべってた。親が酔っぱらって暴れちゃって、道端で動かなくなって引きずり倒した話とかをおもしろおかしく話す同級生がいたりするんですよ。毎日そんな話を聞いて、ゲラゲラ笑ってた。

男性には嫌われるけどね。結果いまも全員結婚できてないっていう恐ろしいことになったし(笑)。

— それはそれですごく楽しそうです。でも、不幸があったらショックで人に言えないというタイプの人もいますね。

光浦 あー、自己嫌悪との戦いみたいなね。そっち方面の思春期も好きなんだけど……難しいね。みんなが悩みで笑ってくれたらいいけどなあ。


次回、「今年の目標は『ビッチ化計画(バブルよもう一度!)』」は、3/11更新予定

光浦 靖子(みつうら やすこ)

1971年愛知県生まれ。幼なじみの大久保佳代子と結成したオアシズでデビュー。バラエティ番組、ラジオ等出演するほか、舞台やコラム執筆など多彩に活躍。著書に、『傷なめクラブ』『男子がもらって困るブローチ集』『子供がもらって、そうでもないブローチ集』など。

構成:釣木文恵 撮影:吉澤健太


お前より私のほうが繊細だぞ! (幻冬舎文庫)
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傷なめクラブ (幻冬舎文庫)
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男子がもらって困るブローチ集 (Switch library)
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子供がもらって、そうでもないブローチ集 (Switch library)
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書いた人に聞いてみた。

cakes編集部

いま世間で響いているおもしろい本、素敵な本。その本を書いた人に、じっくりとお話を聞いてみます。

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コメント

fleurdelisblanc 寂れた洋品店を勝手に心配するくだりが共感でき過ぎるんだが それ普通じゃなかったのか> 約4年前 replyretweetfavorite

miyaan2010 |書いた人に聞いてみた。|cakes編集部 @cakes_PR |cakes(ケイクス) 心が軽くなったかな。 https://t.co/QE62NGVZSL 約4年前 replyretweetfavorite

0501Can #光浦靖子 約4年前 replyretweetfavorite

kubo_unatama お笑いが全てのルールになればいい。 約4年前 replyretweetfavorite