松尾スズキがいま輝いている3つの理由
演劇から小説まで、マルチに活躍
大人計画の座長であり、脚本・演出家。舞台だけでなく映画やドラマにも個性派俳優として出演し、ときどき監督も。小説やエッセイも書けば、漫画の原作も……とマルチクリエイターっぷりがすごい!
作家としても芥川賞に2度ノミネート
舞台の脚本では1997年に演劇界の芥川賞といわれる岸田國士戯曲賞を受賞。小説でも、2006年と2010年に芥川賞にノミネートされており、それぞれのジャンルで評価されています!
それでも笑いを忘れないのがすごい
発表の場が舞台や映画でも、サブカル雑誌のエッセイでも、純文学系文芸誌に書いた小説でも、揺らぐことないエンターテインメント性。サービス精神なのか照れなのか、シリアスに徹することなく笑わせてくれます!
松尾スズキの「笑い方」と「笑わせ方」
—— 笑うことや笑わせることに関して、松尾さんのなかには決め事とかルールみたいなものってありますか?
松尾スズキ(以下、松尾) 歳を取るにつれて優しくなってきたせいか、あんまりこう、弱者を笑うみたいなことは……まあ笑ってるんですけどね(笑)。よくよく考えると笑ってるんですけど、特定の人を笑いものにするような笑いは、もういいかなと思っています。差別ギャグみたいなことは、若い頃に散々やったので……。
—— 松尾さんは、「笑わせたい」という欲の方が、「笑いたい」という欲よりも強いんでしょうか?
松尾 いや、笑いたいですよ。笑える映画があったら必ずDVDを買って観るようにしているくらいです。そういえば、映画に限らずいろんな作品を観てきましたけど、まだ僕が手を出していない世界があってね。僕は芸人のライブを観に行ったことが、ほとんどないんですよ。それは、これからやってみようかなと思っています。
—— それは意外です。これまでは、芸人に興味がなかった?
松尾 忙しすぎて観に行く暇がなかったんです。たまにDVDで観たりはしますけど、かもめんたるとかおもしろいと思いますよ。たまに大阪へ行くと吉本新喜劇を観たりはするんですが、漫才ってやっぱり生で観るとすごいですしね。最近では、オール阪神・巨人のすごさを思い知らされました。
—— 大ベテランですね。どうすごかったんですか?
松尾 ネタ自体がおもしろいっていうのもあるんですけど、客の反応によって、テレビをザッピングするようにネタを切り替えているなっていうのがわかるんですよ。しかもそれを、笑いを途切れさせずにつなげてやっている感じがあって、やっぱりこの人たちは筋金入りだなって思いましたね。
最初はよくテレビに出ているタレント芸人が出てきて、決められたことをずっとやっていて。まあテレビの人だからお客さんも沸くんですけど、そのあとにオール阪神・巨人が出てきて、「そんなもんちゃうでぇ」っていう感じでウワァァァァっとこねくり回していく感じがね。さすがだなと思って。
笑いを芸人が独占しているのは心配だ
松尾 ただ、今は笑いといえば芸人という流れが強すぎて、おもしろいことを考える人がみんな芸人の世界に吸い取られているなっていう危惧があります。
昔は演劇でも笑いをやる人がたくさんいたのに、大人計画以降、笑いでどうにかなっている人たちが出てきていないんですよね。ジョビジョバが一時期出てきかけたけど、解散しちゃったし。
—— そのなかで、松尾さんが演劇での笑いにこだわるのはなぜですか?
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