「うーん、どうしようかな……」Bクラスの女が迷っている素振りを見せた。
「私たち、あっちのお店に行こうとしてて……」
こっちの女は限りなくAに近いBだ。
「ここで会ったのも何かの縁ですし、いっしょに行きましょう」と勇太が説得を試みる。
「それじゃあ、10分だけいっしょにビールでも飲まない? そっちのお店で」
僕はタイムコンストレイントメソッドを使って押してみた。
「わかった。じゃあ、10分だけね」
こうして、あっさりと狙いのふたり組をつかまえた。
店に着いて、テーブルに座ると、僕たちはいつものように安い酒で乾杯し、他の女たちにした話とほとんど同じようなことをまた話した。ふたりともおそらく20代後半で、OLをしていた。名前は奈菜(B+)と仁美(B-)だった。
しばらく飲んでいると、僕たち4人はかなり酔っ払ってきた。もはや僕の興味は、連絡先をゲットして何とか別の日にデートに誘い出すのではなく、奈菜をこのままどこかに連れ出すことに移っていた。
「せっかくお酒が飲み放題なんで、みんなで山手線ゲームでもしませんか?」
勇太はよくできる後輩だ。
「え〜、学生みたい」仁美が口では拒絶しながらも、少し嬉しそうにしているのを僕は見逃さなかった。ここは考える時間を与えずに、すぐさま山手線ゲームをはじめてしまうのが正しい戦略だ。
「はい、じゃあ、勇太からはじまる♪ イェイ! 山手線ゲーム♪」僕はギアチャンジしてテンションを上げた。「イェイ! お題は?」
「じゃあ、魚の名前!」勇太がお題を決定し、僕はパンパンと手を叩く。何度も勇太とリハーサルしたパターンだ。日本有数の漁港がいくつもある宮城県出身の勇太と、静岡県出身の僕が、魚の名前で負けるわけはない。僕たちは、獲物をまんまと罠の近くにおびき出すことに成功した。
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