真面目に働かない理由は「空気が悪いから」

部内の空気が悪いから、モチベーションが上がらない。一人だけ頑張ったら、なんか寒い感じ。どんな一流企業でも、一度空気が悪くなったら、それを変えるのは至難のわざ。真剣に働かない言い訳が「空気が悪いから」というのは、どの会社にも共通しているようです。美沙の心を支配している空気の正体を、またも坂井虎男が一刀両断にします。この小説は、崖っぷちOL浅井美沙がキラキラ働くために必要なことを学んでいく小説です。

はぁ。イカンイカン。溜息はイカン。とは言いつつも、自然と息が漏れてしまう。この頃の美沙は、呼吸だと自身に言い訳をすることですらままならなかった。

「浅井さんの『空気が違う』という発言は、何を意味しているのか、教えてくれますか?」

昨日の面談から坂井の低い重い暗い……とかく、人の鋭気を一滴残らず吸い取るヒルのような坂井虎男の声が、美沙の脳裏に事あるごとに浮上した。もう美沙は虚脱状態だった。坂井の納得する回答などおそらくない。自分の本心を打ち明けることが最善の道なのだ! そうなんとか自身を鼓舞し、いつもの中会議室へと向かった。

「浅井さん、『空気が違う』という発言は、何を意味しているのですか?」

 しっかり、先日と同じ質問が繰り返される。美沙はとりあえず用意をしてきた言葉を口にした。

「何だか覇気のない職場の空気でしょうか」

「それで、自分には空気が合わないと?」

「はい」

「浅井さんは、活気に溢れているのですか?」

 そう言われると、そうでもないだけに……言葉に詰まる。

「浅井さんも同じじゃないのですか?」

 やはり一筋縄ではいかない。

「いや……なんでしょうか、あたり前のことが守られない空気と言いますか……」

「何ですか? あたり前のことが守られない空気とは?」

「提出期限とか」

「そうですか。それで空気が違うと感じるわけですね?」

「……はい」

「空気が違うと、浅井さんにはどのような支障をきたすのですか?」

どのような支障? モチベーションが…… 瞬時に浮かぶそのフレーズを急いで呑み込む。

「どうしましたか? 支障がなければ、辞める必要はありませんよね?」

やはりもう、正直な気持ちを話すしかない。

「自身のモチベーションのことは、わかりました。仕事にモチベーションが関係ない。ということも理解したつもりです。ただ、周りの空気によって、やはりモチベーションが下がることがあるのも事実です。それは自分ではどうしようもない事実なんです。そんなことに左右をされていてはダメだ、と以前坂井部長はおっしゃいました。確かにそうかもしれません。そうかもしれませんが、仕方がないことなんです。自分でも気持ちをコントロールすることができないのですから!」

「仕方がない、ですか」

『仕方がない』というフレーズだけを切り取られると、いかにも怠惰な人間だと言われているようだ。

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キラキラOL浅井美沙 わたし今日からキラキラをやめてギラギラします!

菅沙絵

仕事なんて、生活のため、寿退社までの腰かけに過ぎないと思っていた――。 そこに突如まいこんだ『希望退職者募集のお知らせ』。 やる気ゼロの崖っぷちOLが会社の魂を揺り動かすようになるまでの奇跡の成長を描く。 Yahoo!トピッ...もっと読む

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コメント

chiponyo 空気って大切ですよね![ 3年以上前 replyretweetfavorite