福田直人役・坂東尚樹氏
【前編】キャラクターと共に輝く喜び

アニメ宇宙兄弟の声優さんは、みなさんどこかしら原作のキャラクターと顔や雰囲気が似ている。特に、六太と一緒に宇宙飛行士選抜試験を受ける最年長受験者・福田直人役の坂東尚樹さんはよく似ている。年齢も顔も、そして仕事に対する情熱も。

—宇宙飛行士選抜試験に最年長で参加した福田直人という役柄、やりやすかったですか。

会えば誰でも気づくと思うんですが、僕と福田さんって顔がとてもよく似ているんですよ。原作を拝見したときには自分でもすぐ思いましたし、顔合わせにスタジオへ行ったとたん、周りがいっせいに「へーえ、似てますね!」と(笑)。

でもそれって、やりにくいこともあるんです。顔が似ているからと言って全く同じ反応をとるとは限らないんですが、あまり「あの役と本人が一体だ」と見なされてしまうと、周囲のイメージの方に近づけていかないと納得してもらえなかったりする。つまり、何もしないうちにものすごくハードルが高くなっている時があるんです。

まあそれは望むところでもあって、だったらとことん福田さんに近づこうという気になりますけどね。原作を読み込んで、福田さんと自分との違いを見つけ出しては、福田さんの思考回路に自分をなじませようとしていきました。

でもやっぱり、たまには自分の色が出てしまったりすることだってある。閉鎖環境での試験を終えて、福田さんが六太とふたりでソフトクリームを食べるシーンがあります。そのときに福田さん、ソフトを落としちゃうんですね。そこで僕は「わああっ」と声を上げてしまった。じつはソフトクリームが好きなので。そうしたらみんなから「それは驚きすぎでしょう」と。福田さんはソフトくらいでそんなに騒がないっていうんです。たしかに(笑)。自分をちょっと出し過ぎましたね。

—年齢としては、福田さんとほぼ同じなのですね。

そうなんです。アポロ11号の打ち上げが小学校の高学年のころで、モロに影響を受けた世代。NASAといえば信奉の対象だったし、福田さんが宇宙への夢をあきらめない気持ちはよくわかる。選抜試験年齢の壁を超えてがんばる情熱はすごいですね。いっぽうで、閉鎖環境の生活では、誰よりも冷静にチームをリードしていきます。内側ではかなり振幅がある人物です。そのあたりをうまく捉えてバランスをとるのは、福田さんを演じるうえでの難所になりました。

—冷静さと情熱を併せ持つ演技は、たしかに難しそう。ましてやそれを声だけで表現するなんて、どうしたらいいのか想像もつきません。

声優というのは、すでに表情や動きがアニメーションとして存在しているところに合わせていくものですから、それほど勝手に暴れ回るわけにはいきません。福田さんの役にしても、表情や動き、シーンの流れから推察して、「ここは年齢相応に落ち着きを発揮するところ、次は長年秘めてきた情熱を少しさらけ出すところ」と声の演技をつけていきます。いろいろな制約があるなかで、あれこれ工夫していく。それが声優の醍醐味といえますね。

ただし『宇宙兄弟』の場合、これは原作からの流れなんですが、動かない顔の映像に心の声だけが聞こえてくるシーン、いわゆる「モノローグ」が、アニメにしてはかなり多い。これ、じつは声優としてはおいしいところなんです。

絵柄に大きな変化がないので、こちらとしては自由度がアップして、自分の演技をそのままぶつけられる。声優としての技術の見せどころです。放送でそのあたりにもぜひ注目して観て、いや聴いていただければうれしいです。

—常に絵柄を意識しながら演じなければいけないのが声優なのですね。もっと自分の存在感を出したい! などと思うことはありませんか。

それはありませんね。絵柄との共同作業がうまくいって、視聴者の方にそのキャラクターをよりリアルに感じていただけるのが理想です。自分の存在感ばかりを考えると、往々にして力み過ぎになってしまいますね。

福田さんの姿と同時に坂東尚樹が見え隠れしてしまっては、観る側は集中できません。ふたりが一体となり、馴染んでいくことが大事です。福田さんの映像は声を入れる前にできあがっていて、どうやら僕に合わせてくれたりする気配はない(笑)。ならばこちらが福田さんに寄っていって、うまく合わせていくしかないんです。

合わせると言いましたが、ただ「なぞる」だけではダメだったりして、そのあたりがまた微妙なところです。キャラクターの口の開閉に合わせてセリフを言う、そこは当然押さえなければいけない。でも、それだけだとどうも感情をじゅうぶんに表現できなかったりすることはある。

そこで、他の人は気づかないほどわずかに、セリフに入るタイミングをずらしたり、間を取ったりと試行錯誤する。と、急にそのキャラクターが生き生きしはじめたりすることがあります。どうやって調整するのかは、きわめて感覚的なことなので、なかなかうまく人に伝えられないのですが。でも、作品上の人物といっしょになって輝けたときには、ちょっと他では味わえない快感があるものです。おもしろいですよ、声優という仕事は。

(後編に続く)

取材・文/山内宏泰

 

坂東 尚樹(ばんどう・なおき)

俳優、声優。北海道出身。劇団青年座研究所本科を卒業後、劇団新人会に所属。 
1991年に『太陽の勇者ファイバード』にて初レギュラー(ガードスター役)を獲得後、積極的に声優活動を展開。その後はアニメ、海外ドラマ・映画の吹替え、ナレーションまで幅広い活躍をしている。2011年より声優塾「シャベルテック」を開設。後進の指導も行っている。

 

 

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この連載について

宇宙兄弟アニメ声優インタビュー

宇宙兄弟

「宇宙に行く」という夢をまっすぐに目指し続ける南波兄弟。彼らや彼らをとりまく人々の想いと絆を描く大ヒット漫画が『宇宙兄弟』(小山宙哉原作)だ。同作品の人気の秘訣は、登場人物の葛藤や感情の描写のリアルさにある。そこで、現在放映中のアニメ...もっと読む

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