未来景イノセンス

第10回 涙

ぼくは茶の間に1人残される。許された、とは思わなかった。見捨てられた、と思った。両親はぼくを普通の大人に育てることを諦めたのだ、と――。大ヒットボカロナンバー『未来景イノセンス』の発売を記念して、一部を公開します。


 黒谷さんに見送られて、下り最終のゴンドラに乗った。混んでいて、ぼくは奥のドア付近に押しやられた。ゴンドラが下降し始める心地よい重力の変化を楽しみながら、窓辺に顔を寄せる。低層の霧は晴れ、雨は止んでいる。星屑のように散らかった明かりの中からぼくの住んでいるマンションも見つけられそうなほどに、眼下の街並みがくっきりと見えてきた。
 ゴンドラを降りて、家までの道を歩きながら考えた。お父さんとお母さんは、ぼくが今どこにいると思っているだろう。寝ないで心配しているだろうか。

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未来景イノセンス

koyori(電ポルP) /石沢克宜

人々が空に住むようになった未来の世界。空中都市ホクトに住む中学生のシマは、幼い頃­から好意を持っているミドリと同じ高校を受験するも失敗してしまう。好きな人や親友た­ちと離れ離れになる現実から目をそらすシマだが、時間は無情にも過ぎ去って...もっと読む

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