未来景イノセンス

第9回 本気

「シマくんはほんとにその子のことが好きなんだなあ……ミドリちゃん、だっけ」「ハイ……」 あらためて言われると恥ずかしい。頬が熱くなった。「いいなあ。大事にしてほしいなあその気持ち」 黒谷さんは遠い目をしていた。――。大ヒットボカロナンバー『未来景イノセンス』の発売を記念して、一部を公開します。



ぼくは、そこから一気にしゃべった。
 今夜の出来事からさかのぼり、親に抗議するために家出してきたこと、進路のことで親とケンカしたこと、ケンカは選択校に落ちて浪人するとぼくが言いだしたから、そして浪人する理由は、好きな子と同じ高校に通いたいから—ということを、洗いざらい喋ってしまった。数年ぶりに会った、歳の離れた知り合いにどうして話をしてしまったのか。無理して飲み始めたブラックコーヒーに酔ったのか、窓から漏れてくる綺羅きらびやかな光にまどわされたのか。黒谷さんがぼくの進路に無関係だから、話しやすかったのかもしれない。
 話し終わっても黒谷さんはずっとコーヒーカップを見つめて黙っていた。ぼくも話し終わってなんとなく黙ったままだった。吐き出してスッキリしたというのもあるし、これ以上話すことがなかったというのもある。

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未来景イノセンス

koyori(電ポルP) /石沢克宜

人々が空に住むようになった未来の世界。空中都市ホクトに住む中学生のシマは、幼い頃­から好意を持っているミドリと同じ高校を受験するも失敗してしまう。好きな人や親友た­ちと離れ離れになる現実から目をそらすシマだが、時間は無情にも過ぎ去って...もっと読む

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