未来景イノセンス

第8回 年上の友だち

苦い。顔をしかめてしまったかもしれない。黒谷さんはそんなぼくを尻目に砂糖をスプーンにひとつ、ミルクも少し垂らして飲んでいる。なんだよ、大人の男はブラックコーヒーじゃないの?――。大ヒットボカロナンバー『未来景イノセンス』の発売を記念して、一部を公開します。



「……黒谷さん?」
 ぼくは彼をはっきりと思い出した。見た目は少し変わっているけどそうだ。黒谷さんだ。ぼくの数少ない歳上の知り合いの1人。ぼくは友達だと思ってるけど、彼のほうはどうかな……。
「3年ぶり? ん? 4年ぶりか?」
「たぶん4年ぶり、くらい……ですよね?」
「そうかー。背伸びたなー。そりゃそうか、あのときはまだシマくんたち小学生だもんな」
 彼は笑いながらぼくの肩を叩く。
「知ってる子ですか」
 女の人はさっきからいぶかしげにぼくたち2人を見比べていた。
「うん。しばらくぶりなんだ。まさかこんなところで会うなんてなあ」
「どうします? 指導します?」
「悪い、俺が保護者ってことで、今日のところはさ。よく事情聞いとくから」
 黒谷さんは女の人を拝むようにして頭を下げた。
「ほらシマくんも、お願いして」
 彼はぼくの頭を上から手で押す。ぼくはわけもわからないままとりあえず「お願いします」と今度は自発的に頭を下げた。腰なんか90度に曲がっていたと思う。
「わかりました。じゃ、お任せしますね」
 女の人は仕方ない、という感じのため息を小さくついて、先に歩き出した。黒谷さんにうながされてぼくもその後について歩く。

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未来景イノセンス

koyori(電ポルP) /石沢克宜

人々が空に住むようになった未来の世界。空中都市ホクトに住む中学生のシマは、幼い頃­から好意を持っているミドリと同じ高校を受験するも失敗してしまう。好きな人や親友た­ちと離れ離れになる現実から目をそらすシマだが、時間は無情にも過ぎ去って...もっと読む

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rurirang キャラクター名わろた https://t.co/1SgzVZJD 4年以上前 replyretweetfavorite