未来景イノセンス

第5回 タロー

「君は合格したからそんなことが言えるんだよ。まわりみんな選抜校に受かってさ、ぼくだけ落ちて1人義務校行くなんてさ。辛すぎるよ」 タローに当てつけるような言葉を、つい吐いてしまった。言ったところでどうしようもないのに。不合格はぼく自身のせいなのに。恋愛、友情、進路への葛藤――。大ヒットボカロナンバー『未来景イノセンス』の発売を記念して、一部を公開します。



「腹減ったろ? これウチの母親が。食えって」
 タローが肉まんをお盆に載せて持ってきた。立ち食いの饂飩がまだ胃袋の中に入っていたが、熱々の湯気が香ばしく漂っているのをいだらまた食欲がでてきた。
 タローの部屋に来るのは久しぶりだ。この部屋に来るとまずはゲームをやる。タローはあまりゲームをやり込まないので、ぼくがハイスコアを更新するのが常だった。お互い受験勉強がきつくなってきて、とりあえず合格するまでは遊ばないようにしよう、と取り決めた。タローは合格し、ぼくは落ちた。部屋に入ったとき、タローの机の上に第二高校の入学手続き書類があって、そういうの隠しておいてよ、と思った。ぼくは気づかないふりで、いつものようにモニターの前に陣取ってコントローラーを掴んだのだった。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

この連載について

初回を読む
未来景イノセンス

koyori(電ポルP) /石沢克宜

人々が空に住むようになった未来の世界。空中都市ホクトに住む中学生のシマは、幼い頃­から好意を持っているミドリと同じ高校を受験するも失敗してしまう。好きな人や親友た­ちと離れ離れになる現実から目をそらすシマだが、時間は無情にも過ぎ去って...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

Tweetがありません