21歳の時、用事があって母校の中学に
私は母校が苦手だ。
私にとって母校は、恥ずかしさと屈辱感の歴史そのものだ。最も思い出したくない記憶が、束になってつまっている。
本当は行きたくなかったが、なぜ足を運んだかと言うと、当事インターンをしていた教育系のNPOが中学生向けの教育支援プログラムを開発していて、そのために学校の先生の意見をヒアリングするという仕事を任されたからだ。母校だったら気安いだろうと言われて、最初にアポを取ったのだが、私にとっては一番、気の重くなる場所だった。
吉祥寺のはずれにある、中高一貫校。
通っていた当時よりも、改築してずっと綺麗になった校舎は、なんだか見知らぬ他人のようで、懐かしさなんて、
まるで、昔着ていた服が、いつのまにか仕立て直されて、全く別の服になっていたような。
中学校の職員室のドアを開ける。
普通のドアの100倍、重く感じる。
放課後の人影のまばらな職員室には、中3の時の国語の先生がいた。どきっ、とする。
50過ぎの、見るからに頑固ジジイ、といった風貌の
おそるおそる話しかけると、先生は顔を見るなり「お前、生きてたのか」と言って、突然、はらはらと大粒の涙をこぼされた。
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